本能寺六夜物語
(ほんのうじろくやものがたり)
岡田秀文
(おかだひでふみ)
[戦国]
★★★★☆
♪1998年『見知らぬ侍』で第21回小説推理新人賞、2002年『太閤暗殺』で第5回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞の気鋭の新人ということで期待。
山寺に集まった六人が、一夜ずつ、自分の人生を変えた「本能寺の変」を語るという趣向。六人の語りを通して、本能寺の変の知られざる真相が明かになるという設定が面白い。難しいスタイルに挑戦しているところに好感が持てる。
同朋衆の一人が語る、その夜の信長の姿。穴山信君の家臣が語る、家康の伊賀越え。酒屋の主が語る、信長の家臣の颯爽たる振舞い。京都奉行の用人が語る、変の後に出没した黒衣の鬼の正体。上臈付きの女中が語る、森蘭丸の美少年ぶり。そして、明智光秀の家臣が語る、恐るべき本能寺の変の真相。それぞれの話が興味深くて一気に読み進めた。
第二夜と第六夜のエピソード、第五夜の恐ろしさがとくに印象に残る。
物語●元和元年夏、「本能寺の変」より三十余年、ある山寺に六人の人々が集められた。六人は、身分や職業を異にし、武士もあれば僧侶も商人もいて、尼も一人混じっている。一様に中年を越え、中にはかなり高齢の者もいた。六人は六つの蝋燭の灯りがともる部屋に入ると、円形に等間隔で置かれた燭台の脇に順々に座っていく。そして、全員が腰を下ろすと一人の僧侶をのぞき、いっせいに自分の脇に置かれた蝋燭の灯を吹き消した。僧侶は三十余年前の事変について話しはじめた。集まった者立ちはみな、「本能寺の変」により、自分の人生を大きく狂わされた者たちであった…。
目次■序/第一夜 最後の姿/第二夜 ふたつの道/第三夜 酒屋/第四夜 黒衣の鬼/第五夜 近くで見ていた女/第六夜 本能寺の夜