妖臣伝 厳島合戦異聞 上・下
(ようしんでん いつくしまかっせんいぶん)
小川良
(おがわりょう)
[伝奇]
★★★★☆☆
♪『妖雲大内太平記』(97年4月・叢文社刊)の改題。入手が難しいと思われていた作品が文庫本として登場。タイトルが変わってしまった理由が不明だが、タイトルの妖臣とは、誰のことなんだろうか、と頭の隅におきながら読むのも一興か。
久々に本格的な長編伝奇小説を読む。かつてNHK大河ドラマ『毛利元就』で描かれた大内~陶~毛利の世界。土地鑑がなくなじみがないこともあり、苦手な分野だったが、大いに楽しめた。史実に沿った武将たちの抗争を中心に、忍者や妖怪、山伏など伝奇ものの要素をスパイスとしてブレンドし、何ともいえない面白さを創出している。
幻冬舎文庫は普通の文庫本より横が5ミリほど、短くて手にすっぽり収まる感じがしてなかなかいい。
◆主な登場人物
さぎり:野武士
大内義隆:周防、長門の守護職
陶隆房:大内義隆の筆頭家老で、周防富田の城主
相良武任:大内義隆の重臣で文治派の首領
冷泉隆豊:大内義隆の重臣
杉重矩:大内三家老の一人
内藤興盛:隆房の舅で、家老の一人
総子:隆豊の妹
頼子:総子の娘
善常:陶隆房配下の乱波
鹿目:善常の配下の者
小田村次郎:義隆の小姓
安富源内:義隆の寵臣
白菊丸:旅の芸人
天道坊:善常の修行時代の仲間の山伏
大友義鎮:義隆の甥にあたる大内家の嫡男で、豊後の守護
大友晴英:義鎮の弟、後の大内義長
毛利元就:吉田の領主
毛利隆元:毛利家の嫡男
吉見正頼:津和野の領主
フランシスコ・ザビエル:ナバラ出身のイエズス会伝道師
江良房栄:陶家の宿老
物語●天涯孤独の野武士・さぎりは、。一夜の宿を求めて山寺へやってきた。上人に喜んで迎え入れられたさぎりは、そこで冷泉隆豊の妹・総子に娘の頼子を山口の兄のもとに連れていって欲しいと頼まれる…。かくして、さぎりは、武将たちの激しい愛憎に彩られた戦国大絵巻の渦中に巻き込まれることになる。
目次■妖怪の寺/権謀の館/対決/白菊丸/次郎無残/腐臭/起請文/智勇の人 冷泉隆豊/絶叫/興隆寺修二会/悪徳の味/東大寺国衙領返還/修羅の道/今八幡宮襲撃事件/竜福寺の死闘/ザビエル拝謁/ザビエルと隆房/謀反前夜/俵山の神/山口の変/義隆の最期/陶・吉見宿命の対決(以上上巻)|新屋形大内義長/晴賢の苦悩/さぎりと次郎との再会/次郎、善常を襲撃/毛利隆元との密議/杉重矩討伐/旗返城攻め/第二次津和野攻め/元就接見/毛利元就立つ/三本松降伏/桜尾城にて/江良房栄謀殺/鹿目の出現/厳島合戦前夜/村上水軍の参陣/厳島合戦/桜尾城首実検/山代一揆/解説 菊池仁(以上下巻)