間諜 二葉亭四迷
(かんちょうふたばていしめい)
西木正明
(にしきまさあき)
[明治]
★★★★
♪明治時代を舞台にした歴史ミステリーなので、本欄で紹介していいかどうか、迷った。まあ、堅いことを云わずに、西木さんは気に入りの作家でもあるので、載せちゃいます。『ルーズベルトの刺客』も実によかった。
戦後の学校教育の影響か、明治から昭和にかけての近・現代史というのはよくわからない。日露戦争といっても、東郷神社の東郷平八郎さんぐらいしかわからない。
言文一致の『浮雲』の二葉亭四迷(「くたばってしまえ」という江戸弁から付けたペンネームらしい)=スパイ、というだけでわくわくしてしまった。
創作活動に行き詰まる二葉亭が、ロシアに癒しをもとめるところが面白い。後の首相田中義一や日本亡命中の孫文、初代ポーランド大統領からユル・ブリンナーのおじいさんや「東洋のマタハリ」のお父さんまで登場し、物識りになった気がする。
物語●陸軍大学ロシア語学科教授に拝命されたばかりの二葉亭四迷は、参謀本部の明石元二郎少佐のから指令を受ける。ウラジオストックでエスペラント協会の会合に出席し、ポーランド人のアイヌ語研究家ブロニスワフ・ピウスーツキと合うことであった。日露戦争前後に繰り広げられた諜報戦やロシア革命とポーランド独立運動の関わりまで、史実をまじえてスケール大きく描く。
目次■プロローグ/第一章 東京/第二章 ウラジオストック/第三章 ハルピン/第四章 北京/第五章 東京/第六章 樺太/第七章 東京/第八章 ヨーロッパ/第九章 いずこへ/エピローグ/あとがき