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千石船風濤録

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千石船風濤録千石船風濤録
(せんごくぶねふうとうろく)
二宮隆雄
(にのみやたかお)
[海洋]
★★★★☆☆

Yさんから「海を感じるベスト10」について、メールをいただき、作者の二宮隆雄さんのことを知った。ありがとうございます。

> いまさらですが海を感じる時代小説ベスト10に異議あり(笑)
> 二宮隆雄氏という現役のヨット競技者兼海洋時代小説家が
> おられますが、これは船の専門家が書いているので、結構
> 面白いとおもうのですが…。 1990年「疾風伝」で小説現代新人
> 賞を受賞しているようです。『江戸の風』(講談社)や『覇王
> の海』(角川書店)、『千石船風濤録』(実業之日本社)、『雑
> 賀孫市』(PHP文庫)などが海を感じさせます。

いうまでもなく、ぼくはマリンスポーツについて門外漢であり、1年に1度、海に行くか行かないかという生活を送っているわけだが、この作品の面白さは十分に堪能できた。さすがに現役のヨット競技者が書くと、その凄みが違う。久々に海を強く感じた。近々ランキングは訂正したいと思う。

江戸時代、江戸の酒は上方からの下りものが高級品とされてきたが、その中でも名高いのが灘の清酒である。この作品はその酒の価値をさらに高めることになる“新酒番船競走”を題材に全編が海洋小説である。とくに、ヨット乗りなければ描けないような迫力ある操船シーンが見ものである。

難点は、二宮さんの作品が入手しにくいことだ。本作品も大手書店をいくつも回ってようやく見つけた。他の作品もぜひ読みたいのだが…。

◆主な登場人物
小金次:千石樽廻船「宝徳丸」の炊(かしき)。塩飽の佐柳島出身
吉蔵:「宝徳丸」の船頭
文次:「宝徳丸」の表(おもて)
四郎丸:「宝徳丸」の若衆頭
弥太:「権現丸」の炊で、小金次の幼なじみ
小西屋亀之助:「権現丸」の船主
卯吉:「権現丸」の船頭
伊佐次:「権現丸」の表
権三:塩飽のはぐれ狼と呼ばれる船頭
市兵衛:船大工の棟梁
力松:「権現丸」の若衆頭
善兵衛:「権現丸」の初老の水主

物語●灘の新酒を満載した千石船を駆って、北西風吹きすさぶ二月の海を、西宮沖から江戸まで駆け走る“新酒番船競走”。その「一番船」の誉れを賭けて江戸へ向かう十四艘の千石船。逞しき船乗りたちが死闘の果てに目指す勝負の行方は!?…。

目次■第一章 新酒番船競走/第二章 塩飽の権三/第三章 海難/第四章 一番船

装幀:道信勝彦
時代:文化二年(1805)
舞台:西宮、太平洋、品川
(実業之日本社・1,456円・1996/10/25第1刷・261P)
購入日:98/05/17
読破日:98/06/01

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