覇王の海 海将九鬼嘉隆
(はおうのうみ・かいしょうくきよしたか)
二宮隆雄
(にのみやたかお)
[海洋]
★★★★☆
♪伊勢・志摩地方に旅行することになり、この本が読みたくなった。九鬼嘉隆というと、白石一郎さんの『戦鬼たちの海』も思い出される。
織田信長のもとで、水軍の将として活躍する九鬼嘉隆、その半生を海洋時代小説の名手がダイナミックに描いている。
近江国国友村の鉄砲鍛冶に長鉄砲を戦船に搭載したり、巨大鉄張り軍船で、三万五千石の大名にのしあがる信長時代の嘉隆。朝鮮出兵の蹉跌を経験する秀吉時代の嘉隆。関ヶ原の合戦に最後の勝負にでる家康時代の嘉隆。嘉隆を通して、戦国という時代が鮮やかに切り取られた快作。
物語●伊勢海を、九鬼水軍の戦船「竜神丸」が長い櫓先をうねりにたわませ、力強く波を切っていく。戦船の舳先には、海賊用の煉革胴具足を身につけた若者・九鬼嘉隆が仁王立ちしていた。波切大王の海城を志摩地頭軍に追われての敗走である。生まれ故郷の志摩国を逃げ捨てた嘉隆は、伊勢海をへだてた尾張国の当主―三十一歳の織田信長のもとに走るのだった…。
目次■第一章 志摩海賊衆/第二章 熱田の杜/第三章 小牧山城/第四章 長鉄砲/第五章 織田水軍/第六章 女長者/第七章 志摩平定/第八章 鉄張り軍船/第九章 海王丸/第十章 日本丸/第十一章 船出/解説 井家上隆幸