鴻池一族の野望
(こうのいけいちぞくのやぼう)
南原幹雄
(なんばらみきお)
[伝奇]
★★★★☆
♪映画畑(日活)出身らしく、南原さんの作品は、ストーリーが視覚的でそのままスクリーンを見ているように展開し活写されていてわかりやすく、見せ場がテンコ盛りだ。
本編も、たとえはよくないが、コロンビアの麻薬マフィアに立ち向かうアメリカ政府というようなたたずまいがあり、ハリソン・フォードが出てきそうな感じがする。
豪商と享保の改革で知られる、緊縮財政政策の将軍吉宗の対立、その背景にある江戸中期の経済の矛盾と破綻など、経済小説としても読める。
鴻池を支える影の軍団(新田主家の武装集団 )の出自(戦国尼子・水股衆の末裔)と、その使用する武器、石つぶてと神道夢想流棒術(あの夢想権之助が考案した)の強力さが物語を盛り上げている。
四代目鴻池善右衛門が鴻池一族の総帥のわけだが、今、並行して読んでいる『竜馬がゆく』にもその末裔がチラッと出てくるのが興味深い。
物語●大名貸しで全国を経済的に支配しようとする鴻池一族。その野望を食い止めよ、と中町奉行所与力檜十蔵は大阪に向かう。たちまち十蔵に襲いかかる鴻池の傭兵たち。必殺の棒がうなり、石つぶてが飛ぶ…。