幕府隠密帳
(ばくふおんみつちょう)
南原幹雄
(なんばらみきお)
[伝奇]
★★★☆☆
♪清原さんの解説によると、作者の南原さんのお父さんも時代小説作家だったらしい。南條三郎というペンネームで昭和十年代から二十年代にかけて活躍されたそうだ。
また、南原さんの時代小説を5つに分類されているのが参考になった。いつも感じることだが、清原さんは、実にわかりやすい解説を書かれるので、読後のまとめとして解説を読むことが多いので実にありがたい。
御庭番というと、同じ南原さんのオムニバス形式の快作「御庭番十七家」(徳間文庫)を思い出す。御庭番の活躍の幅がよくわかり面白かった。そういえば、先月読んだえとう乱星さんの「あばれ奉行」の中にも、御庭番の藪田助八が登場していた。
また、重要な傍役として登場する、服部半蔵の末裔の老忍・服部十蔵がなかなかいい味を出している。伊賀忍法の松葉しぐれ、砂吹雪、空蝉、扇隠れ、月遁の術や甲賀忍法の霧隠れ、根来流忍法ススキの絮などの、山田風太郎ばりの忍法のオンパレードがなかなかいい。
物語●紀州藩主吉宗が八代将軍となって徳川宗家を継ぐとともに、紀州御庭方から藪田助八以下十七人が選りすぐられて、将軍直属の隠密役御庭番となる…。それにともない、隠密復権を狙った伊賀と甲賀の悲願は潰え去った…。そんな中で、一人の御庭番が桜田御用屋敷内で四肢を切り離された残虐な手口で殺された…。
目次■甲賀の挑戦/三月の風に散る/決闘増上寺/顔のない男/伊賀忍法空蝉/忍法〈花の匂い〉/御庭番秘伝/解説・清原康正