鮮魚師
(なまし)
永井義男
(ながいよしお)
[歴史ミステリ]
★★★☆☆☆
♪『算学奇人伝』(TBSブリタニカ刊)で、97年度開高健賞を受賞した永井さんの受賞後初の書き下ろし作品集。3編を収録。
「鮮魚師(なまし)」は、江戸時代における鮮魚ルート鮮魚(なま)街道を描いた作品。澤田ふじ子さんの「虹の橋」等に描かれている、若狭から京への鯖街道とともに興味深い。
「天保糞尿伝」(タイトルが情けないなあ)は、天保の改革と江戸の糞尿リサイクルを描いた作品。あまり、説明臭くならないのがいい。
「蛍狩殺人事件」捕物帳っぽい出来。勝小吉のキャラクターがいい。小松重男さんの「喧嘩侍 勝小吉」が読みたくなった。
いずれも、ミステリ仕立てで楽しく読める。個人的にはもう少く長編に書いてほしいのだが…。ベッドの中で読むのに適した薄さ・軽さでした。
物語●「鮮魚師」布佐(千葉県我孫子市)から松戸まで鮮魚を積んで運ぶ鮮魚師が、深編笠の侍に襲われる事件が続出した。解決に乗り出すのは、若き日の千葉周作…。「天保糞尿伝」天保の改革の頃、西丸下で亀有の汚穢屋勘七は素人っぽい同業者を見かけることから事件に巻き込まれる…。「蛍狩殺人事件」美人の常磐津師匠が谷中の蛍沢で何者かによって刺殺された。不良旗本勝小吉のもとになぞ解きが持ち込まれた…。
目次■鮮魚師|天保糞尿伝|蛍狩殺人事件|あとがき