灰左様なら
(はいさようなら)
村松友視
(むらまつともみ)
[伝奇]
★★★☆☆☆
♪部屋を片付けていたら、出てきたのがこの本。4年くらい前に新刊で購入して、未読のままになっていたものだ。
村松友視さんというと、昔、「私、プロレスの味方です」というエッセー集(プロレス観戦指南書)で、プロレス好きにさせてくれた人で、当時、タイガーマスク(もちろん、佐山聡さん)と古舘伊知朗さんと並んで恩人というべき人。『時代屋の女房』って作品もあった。先日、NHKの駿府の家康をテーマにした番組のホスト役として、久々に拝見した。
この作品は、時代小説のテーマにあまりならない、落語界が舞台。主人公の林屋正蔵をはじめ、兄弟子の朝寝房夢羅久、師匠の三笑亭可楽ら落語草創期の人たちが登場して興味深い。古谷三敏さんの『寄席芸人伝』を彷彿させる。
そればかりでなく、同時期に活躍する戯作家たちも描いていて二重に面白い。とくに山東京伝や十返舎一九のペンネームの由来もうまく説明している。『手鎖心中』(井上ひさし・著)とは、また違う面から一九像が描かれている。
高橋克彦さんのファンの方には、おなじみのからくり人形師・泉目吉も登場するので、注目。ふーん、この時代の人だったんだ。
作中に、秀吉と「蘭奢待(らんじゃたい)」のエピソードが出てきたが、聞き覚えがあるなあ、どこで読んだのだろうか。?が残った。
物語●怪談咄を手に入れるためには、人間の奥深さや怖さを知らねばならない。怪談咄の祖、林屋正蔵のそんな気持ちが、尊敬する「東海道中膝栗毛」の作者・十返舎一九のもつ得体の知れない正体を暴くことへとかきたてていった…。
目次■灰左様なら/解説、のようなもの 立川談四楼