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恋ほおずき

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恋ほおずき恋ほおずき

(こいほおずき)

諸田玲子

(もろたれいこ)
[医療]
おすすめ度:★★★★☆

産む性としての女の代表である江与の倫理観と、為政者側(男性)を代表する清之助の論理がぶつかるシーン。対立しながらもお互いを意識し始める二人。江与の患者たちはみな、胎児を水にしなければならない、のっぴきならない理由を抱えて女医者を訪れる。そして、彼女らに処方されるのが、ほおずきの根を天日で乾燥させ、砕いて薬研で粉にひいたもの。煎じて飲めば、下腹がぎゅっとちぢまって、激しい痙攣に見舞われる。

子を流さねば生きられぬ者の苦しみを描きながら、その一方で、女医者になるきっかけとなる十七歳のころの事件、蛇骨長屋の悪ガキ平吉の成長や妹・真弓の出生の秘密などを織り込みながら描いていく。幕間に交わされる、江与の父で古医方(本道の医師)の六左衛門と岡っ引梅蔵の俳諧談義がほのぼのとして楽しい。

中條(中条)流の堕胎医を描いた作品というと、川田弥一郎さんの『闇医おげん 謎解き秘帖』もおすすめである。

物語●江与(えよ)は、浅草田原町で「中條流婦人療治」と染め抜いた長のれんを出す女医者。中條流は、表向きは妊婦や子どもの病をあつかうことになっていたが、実態は堕胎医である。そんな中で、江与は女医者の実態を探る北町奉行所同心・津田清之助と知り合い、ほのかに恋心をもった……。

目次■章ノ壱 初蛙/章ノ弐 施餓鬼舟/章ノ参 草紅葉/章ノ四 寒雀/解説 縄田一男

カバーイラスト:安里英晴
カバー:中央公論新社デザイン室
解説:縄田一男(文芸評論家)
描かれている時代:天保十三年

(中公文庫・590円・2006年7月25日第1刷・334P)
購入日:2006/08/01
読破日:2006/08/13

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