(こいぐるい)
(もろたれいこ)
[恋愛]
★★★★☆☆
♪本草学者として戯作者として名高い平賀源内。彼に一途な思いを寄せる女・野乃の情愛を描く時代長編。『源内狂恋』(2002年1月、新潮社刊)を改題し加筆改稿したもの。平賀源内というと、小学生のころ(1971~1972)にNHKテレビで見た「天下御免」(早坂暁脚本)の原初体験のせいか、山口崇さん演じる颯爽とした源内像にあこがれ、江戸と現代がクロスオーバーするような新感覚の時代劇に、毎週楽しみに見たことを記憶している。
そのせいもあって、今まで時代小説に出てくる平賀源内のイメージについていつも違和感を感じていた。
本草学者、戯作者、浄瑠璃作者、山師、絵師その他もろもろの肩書をもち、エレキテルを作ったり、源内櫛や金唐革の小間物を作って売ったりしたり、八面六臂の活躍をしながら、逆にどこか一流になりきれない甘さをもった不思議な人物。この作品は、彼の不思議な生涯を、源内に仕える下女の視点から描くことで解き明かした傑作。新しい源内像が再構築できた気がする。
源内の半生を描くことは、よく知られている人物ゆえに、多くの史資料を調べなければならないし、源内の戯作や浄瑠璃などの著作物にあたってみることも必要で、なかなか難作業だと思うだけに、この作品に出合えたことに感謝している。
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2006-05-07 平賀源内の生涯を振り返る時代長編
物語●平賀源内は、癇癪が高じて、米屋の次男で門弟の久五郎と喧嘩騒ぎを起こした末に、斬殺してしまい、小伝馬町の牢に収容された日から始まる。源内は、喧嘩の際に左の脇腹を刀傷を負い、鬱屈して自暴自棄になっていた。揚屋と呼ばれる大牢で、そんな源内を面倒をみるのが、患家の人妻とねんごろになった末に、その亭主を斬殺し、収容されていた老医師・芳玄だった。牢内で痛む脇腹を抱えてまどろむ源内の記憶は、二十七年前の初夏、郷里の讃岐国志度浦に帰っていた……。
死罪を覚悟しながらも、芳玄に励まされて、獄中で自身の心の思いを書き残そうとする源内。回想と妄想で身悶えながらも、頭に浮かぶのは、一人の女性・野乃だった……。
目次■なし
デザイン:新潮社装幀室
解説:田辺聖子
時代:宝暦二年(1752)夏、安永四年
場所:小伝馬町、志度浦、高松、長崎、鰻谷箒屋町、神田鍛冶町二丁目、両国広小路、高松藩下屋敷、白壁町、清住町、神田大和町、神田久右衛門町一丁目代地、ほか
(新潮文庫・590円・2006/05/01第1刷・432P)
購入日:2006/04/28
読破日:2006/05/06