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氷葬

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氷葬
氷葬
(ひょうそう)
諸田玲子
(もろたれいこ)
[武家]
★★★★☆☆

『誰そ彼れ心中』が面白かった諸田さんのサスペンス時代小説。

夫の不在中に、平凡な若妻を襲った忌まわしい事件、諸田さんらしい緊迫感あふれる発端から、ジェットコースターのようにめまぐるしく物語は展開する。『ラストサムライ』や『たそがれ清兵衛』のアカデミー賞のノミネートの影響からか、数日前のTVで、ハリウッド映画は次のコンテンツとして、日本の時代劇を狙っているというような報道があったが、この作品なら、映画化しても、外国人にもわかりやすいものになりそうだ。

『氷葬』のヒロイン芙佐が、物語が進むにしたがって、だんだんと現代的な考え方をしていく。そのために、読者はどんどん主人公に感情移入ができて、面白く読める。舞台設定だけ江戸時代に借りた、新感覚サスペンス小説と思ってもよいかもしれない。

と思わせておいて、実はしっかりとこの時代ならではの事件(こと)も盛り込んでいるのが素晴らしい。これ以上はネタをバラしそうになるので魅力を説明できないのが残念。

物語●芙佐は、岩槻藩士の夫・奥村賢太郎が江戸出府中のため、生後間もない賢之助を産み育てるために、城下から二里あまり離れた黒濱村の老夫婦の隠居宅に移り住んでいた。老夫婦と女中のお初だけの芙佐の寓居に、賢太郎と江戸の学問所が同じだった侍・守谷虎之助が訪ねて来た。守谷は自藩の厄介ごとのために、江戸へ参る途上で、追手に追われる身で、芙佐に書状を託すとともに、一夜の宿を借りたいと頼み込んだ。爬虫類を思わせる目鼻立ちや体を嘗めまわすよう視線に薄気味悪いものを感じながらも、夫の顔をつぶすこともできずに、守谷を泊めることになった…。

目次■第一章 長月――黒濱村/第二章 神無月――岩槻城下/第三章 霜月――小幡/解説 東直子

写真:Shoichi Itoga/amana image
デザイン:大久保明子
解説:東直子
時代:明和三年(1766)長月
場所:黒濱村、岩槻、小幡ほか
(文春文庫・590円・04/01/10第1刷・325P)
購入日:04/02/15
読破日:04/03/06

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