いろはかるた噺
(いろはかるたばなし)
森田誠吾
(もりたせいご)
[読み物]
♪筆者の森田さんは、直木賞作家。『魚河岸ものがたり』や最近では『明治ものがたり』で知られる。出発点は、「いろはかるた」の考証であったという。ちなみに氏の初めての公刊本『昔・いろはかるた』の配本日が、昭和四十五年十一月二十五日で、三島由紀夫の自決の日だった。筆者と三島は、同い年ということで、忘れられない思い出だそうだ。
「い」から「京」まで、東西のいろはかるたをそれぞれ出典も含めて紹介している。黄表紙、川柳、歌舞伎などに頻出しているのがよくわかった。庶民たちはそうした作品を通して、いろはかるたの諺に親しんでいったのだろうか。それとも庶民の口の端によくのぼったので、読本や狂言に使われたのだろうか。両方なのだろう。
読みどころ●「二階から目薬」の目薬は、今の点眼用の水薬ではなく軟膏だった。「年寄の冷や水」とは、水浴びではなくなま水を飲むことだ。…。誰もが知っているようで知らない「いろはかるた」の各句の意味。諺らしい諺中心で内容が教訓的な「上方いろはかるた」と、句形が長くないようも文芸的になり歌の文句のような諺が多い「江戸いろはかるた」。東西のかるたに、庶民の本音を探り、生活の知恵をみる好著。詳細な資料も付している。
目次■いろはかるたの旅/いろはかるた前史/上方いろはかるた/江戸いろはかるた/いろはかるたの民/東西いろはかるた資料/あとがき/解説 佐藤要人