2024年時代小説(単行本/文庫書き下ろし)ベスト10、発表!

明治東京畸人傳

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

明治東京畸人傳明治東京畸人傳
(めいじとうきょうきじんでん)
森まゆみ
(もりまゆみ)
[明治+人物・地誌]

江戸情緒研究の一貫で読み始めた。谷中、根津、千駄木(谷根千・やねせんと呼ぶらしい)のスペシャリスト・森さんの著作を初めて読む。NHK-BSの「週刊ブックガイド」でお顔を拝見していたが、文章もとても親しみやすく、何とも言えない温かみがある。いっぺんでファンになってしまった。
谷中、根津、千駄木(文京区の一部にすぎない)といった、ごく狭いエリアで、よく本や地域誌がもつなあ。と不思議に思っていた。ところが、この本を読んでビックリ。話題やネタの宝庫で、実にいろいろな人たちがこの町を通りすぎていったのである。その中でも取っておきのものを集めたのが本書のように思われる。

チベット潜入の河口慧海、中村屋の相馬愛蔵・黒光夫妻、露伴や鴎外などのエピソードも楽しいのだが、昭和恐慌に発展した倒産銀行の頭取ヂエモンさんの話がとくに興味深かった。当時が、今の時代とよく似ていて、「ペイオフ」がなぜ重要案件になっているのかが少し分かった。

巻末についている「この本から広がる読書案内」というリストが親切。参考にしたい。

読みどころ●上野、谷中、根津、千駄木…。徳川幕府崩壊により破壊され、明治になって再開発されたこの地には、かつて滅茶苦茶面白い人たちがいた。最後まで丁髷だった老舗薬局の主人、悲劇のピアニスト、「静座ブーム」を起こした健康運動家、上野動物園に人生を捧げた男…。遠く過ぎ行く明治が近くに感じられる人物列伝。

目次■エルウィン・ベルツの加賀屋敷一二番館/横山松三郎の池之端通天楼/池之端仲町二十七番地守田宝丹翁事跡/山口半六の東京音楽学校奏楽堂/駒込林町 悲運の久野久/木村熊二・鐙子の谷中初音町二丁目二番地/相馬愛蔵・黒光夫妻の駒込千駄木林町十八番地岡田虎二郎と日暮里本行寺静座会/藪蕎麦発祥の地 団子坂の三輪伝次郎/河口慧海の根津宮永町雪山精舎/村山槐多の歩いた田端と根津/福士幸次郎の田端楽園詩社/サトウハチローの桜木町と弥生町/吉丸一昌の動坂町三百五十七番地/殿様作曲家松平信博の桜木町アオイ横丁/春日とよの上野桜木町二十二番地/古賀忠道の上野動物園ひとすじ/桃川燕雄の谷中初音町の茅屋/団子坂の先生・物集高量の大往生/山車の行方―人形師原舟月のこと/露伴が谷中にいた頃―五重塔の話/白秋の墓―天王寺墓畔吟/川端康成―駒込林町雨戸のおまじない/円朝・谷根千めぐり/渡辺治右衛門て誰だ/路上の肖像―あとがき/この本から広がる読書案内 解説鈴木博之

カバー装画:加藤千香子
解説:鈴木博之
(新潮文庫・514円・99/07/01第1刷・320P)
購入日:99/10/24
読破日:99/12/29

Amazon.co.jpで購入