玉人
(ぎょくじん)
(みやぎたにまさみつ)
[中国]
★★★★☆
♪『重耳』(講談社)以来、宮城谷さんの作品を久々に読んだ。日本の時代ものだけで手一杯で、とても中国ものまではという感じで、手を出さないようにしていたのだが…。宮部みゆきさんの解説に乗せられて、つい読んでしまった。宮部さんは書き手としてばかりでなく、読み手としてもとても優れていると思う。
短編6編を収録したこの作品集は、6つの話がそれぞれ味があり、しかもラブストーリー・ベースに、ミステリーのスパイスが絶妙な加減でブレンドされていて面白い。宮城谷さんは、長編作家のイメージが強かったが、短編もいける。
とくに、ロアルド・ダール的な味の「雨」と、ホームズもののようなの楽しみのある「風と白猿」、宮本昌孝さんの健気系のヒロインが活躍する「歳月」が好きだ。
物語●「雨」亡命行中の叔孫豹は、暴風雨をしのぐために、とある農家に宿をとった…。「指」すばらしい指を持つ男・疾は、衛の実力者・子朝の娘と結婚するために、愛妻と別れることを強いられた…。「風と白猿」墨子の孫・原々斎は、将軍からさらわれた新妻を捜しだすように依頼された…。「桃中図」大商人の息子・李秀は、幼いころから病弱で、いつも従僕の苦平に守られていた…。「歳月」商人の娘・小娥は姉と一緒に父の商用の旅について行き、段居貞という若い男と出会った…。「玉人」李章武は、友人の家で不思議な燭台に惹かれた…。
目次■雨|指|風と白猿|桃中図|歳月|玉人|解説 宮部みゆき