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堪忍箱

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堪忍箱

(かんにんばこ)

宮部みゆき

(みやべみゆき)
[短編]
★★★☆☆☆

江戸に生きる名もない市井の人々を温かい目で見守る宮部さんの珠玉の作品集、遂に文庫化。

揺れる乙女心を描いた「てんびんばかり」が見事。

それはそうと、宮部さんの独特の比喩が好きだ。たとえば、「幸い、その夜はよく晴れた。月は鏡のように明るく、まるで、夜を真ん丸に切り開き、そこから灯籠を傾けて下界を見おろしておられるかのようだった」(「十六夜髑髏」より)。作中に1、2回はこの必殺技を繰り出される。

物語●「堪忍箱」菓子商の近江屋には、堪忍箱という黒い漆塗りの文箱があった…。「かどわかし」畳職人の箕吉は、近所で見なれない子どもからかどわかしてほしいと頼まれた…。「敵持ち」三度も続けて刺し殺される夢を見た、板前の加助は、同じ長屋に住む浪人・小坂井又四郎に用心棒を頼んだ…。「十六夜髑髏」火事でふた親と弟を一度に失ったふきは、米屋の小原屋に上がったが、四代続く、その店には先輩の女中の話では、気味が悪いことがあるという…。「お墓の下まで」差配の市兵衛に育てられた、ゆきと藤太郎とおのぶは、みな捨て子だった…。「謀りごと」丸源長屋は、十年間、一度も火事に遭っていないというのが自慢だった。その丸源長屋の差配人黒兵衞が変死した…。「てんびんばかり」お吉は幼なじみで同じ長屋でいっしょに育ったお美代を嫁に出した時から、ずっとひがんでいた…。「砂村新田」お春はおきんおばさんに紹介されて、砂村新田の地主の家に下働きの女中として働くことになった…。

目次■堪忍箱|かどわかし|敵持ち|十六夜髑髏|お墓の下まで|謀りごと|てんびんばかり|砂村新田|解説 金子成人

カバー装画:藤田新策
解説:金子成人
時代:明記されず。
場所:「堪忍箱」本所回向院脇、「かどわかし」浜町、「敵持ち」深川元町、柳原町三丁目、「十六夜髑髏」高橋、「お墓の下まで」深川富川町、「謀りごと」深川吉永町、「てんびんばかり」山本町、「砂村新田」海辺大工町ほか
(新潮文庫・476円・01/11/01第1刷・ 244P)
購入日:01/11/03
読破日:01/11/15

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