平成お徒歩日記
(へいせいおかちにっき)
宮部みゆき
(みやべみゆき)
[エッセイ]
♪宮部みゆきさんってサービス精神旺盛というか、読者思いというか。こういう人って、応援したくなる。推理小説家にして、時代小説も書かれる宮部さん、この手のものを書かせたらやっぱり、面白い。企画の勝利でしょう。でも、小説以外の単行本が初めてというのは少し意外だった。
半透明のハードビニールのカバーの装幀も目新しくて、その特徴を生かした帯がわりのコピー分も新潮社らしい、少しヒネリが利いた名文だ。いつも思うのだが、新潮文庫の表4(裏のカバー)の作品紹介のコピーは簡潔にして魅力を最大限に伝える文章だと思う。読書録を書くときにこんな風に書けたらいいなと、参考にしてもらっている。やはり専門のライターがいるのかな。
読みどころ●いにしえの大江戸を探訪する紀行エッセイ。筆者の初の小説以外の単行本。カバー(このコピーがよくできているので、勝手に引用させてもらうと)によると、
いにしえのなぞと不思議はアタマでなく足で、解きあかす― 前代未聞の歴史“実体験”ツアーにいざ出立。
時をかけるミヤベが、あな恐ろしや毒婦に身をやつし、市中引廻しのうえ島流し。またある時は赤穂義士に早変わり。ええじゃないかとお伊勢参りに善光寺。あれに見ゆるは桜田門。
大江戸の市井のくらしの知恵に思わず膝をたたき、謎また謎、謎つづきの道中にミステリー作家の血が騒ぐ。
時間旅行の身軽さは、これSF作家のゆえなるかな。講釈、能書き、後日談のあれこれも、たんとご用意し、汗と涙、時速一里のお徒歩道中をお楽しみあれ。
目次■前口上/其ノ壱 真夏の忠臣蔵/其ノ弐 罪人は季節を選べぬ引廻し/其ノ参 関所破りで七曲り/其ノ四 桜田門は遠かった/其ノ伍 流人暮らしでアロハオエ/其ノ六 七不思議で七転八倒/其の七 神仏混淆で大団円/剣客商売「浮沈」の深川を歩く/いかがわしくも愛しい町、深川/あとがき
装幀:新潮社装幀室
写真:田村邦男/土居誉
場所:忠臣蔵凱旋ルート、引廻しルート、箱根、江戸城一周、八丈島、深川、善光寺、伊勢神宮ほか(新潮社・1,500円・98/06/30第1刷・96/08/20第42刷・247P)
購入日:98/07/12
読破日:98/07/18