寛永無明剣
(かんえいむみょうけん)
光瀬龍
(みつせりゅう)
[時代SF]
★★★★☆
♪ハルキ文庫では、かつて角川文庫で人気を博した作品の復刊を続けている。なかなか賢いやり方である。いずれにしても幻の時代SFの傑作が甦ることは嬉しい。光瀬さんと聞くと、子どもの頃、マンガで見かけた『百億の昼と千億の夜』、『ロン先生の虫眼鏡』などの印象が濃くて、SF作家としてのイメージが強い。『寛永無明剣』は、時代小説の形を借りたSF小説。
時代小説には、伝奇小説といわれるジャンルがある。非サイエンスフィクションといったところか。また、SF時代小説の書き手としては、半村良さんのことが頭に浮かぶ。光瀬作品の特徴は、時代小説部分のリアリティとSF小説部分の科学性の高さと豊かな空想力が絶妙に融合されている点であるように思われる。
柳生一族(宗矩や十兵衛ら)や松平伊豆守、春日局らが登場し、時空を超えた戦いを繰り広げる。昭和44年(1969)に書かれた作品とは思えない新しさがある。
物語●豊臣方の旧臣・石川修理が老中襲撃の意図を持って江戸に潜入した。老中松平伊豆守の特命を受けた、勘定頭支配諸国産物吟味方与力より北町奉行所へ与力添役として出向している六波羅密(ろくはらみ)たすくは、北町奉行所の役人たちと、一味が隠れ潜んでいる品川弘明院を取り囲んだ…。
目次■一 品川弘明院/ニ 乱刃/三 柳生来たる/四 柳生一族/五 丹阿弥由紀/六 町にひそむもの/七 襲撃/八 さざれ石/九 政商の動き、あわただし/十 背後の影/十一 忍び/十二 暗闇/十三 春日局/十四 お丁字長屋/十五 決戦村松立場/十六 焼打ち/十七 月光/十八 稲葉佐渡守/十九 紅蓮/二十 おれん/二十一 円二郎占い/二十ニ 江戸討入り/二十三 庄田喜左衛門/二十四 青の魚/二十五 舟宿のおかみ/二十六 時間局/二十七 審判の時/二十八 寛永御前試合/二十九 無明の敵/三十 決戦/解説 縄田一男