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花櫓

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花櫓
花櫓
(はなやぐら)
皆川博子
(みながわひろこ)
[芸道]
★★★★☆☆

江戸の芝居町を舞台に、中村座の娘たち(お菊とお珊)の恋と青春を描く、ちょっとせつない物語。後に、中村座の控櫓(本櫓が経済的に破綻して興行できないときに、5年間限定で代わりに興行を行う座元のこと。森田座→河原崎座、市村座→桐座と、それぞれ決まっていた)都座の座元になる源次、中村座を支えることになる、伝九郎と七三郎の5人を中心に物語は展開する。青春小説ととらえることもできそう。

市川団十郎、松本幸四郎、尾上菊五郎らきら星の如く名優たちが登場し、江戸歌舞伎の世界が堪能できる贅沢でちょっとためになる傑作。また、源次が馬場の芝居で、鳥山石燕の『画図百鬼夜行(えずひゃっきやぎょう)』に題材をとった、エグい見世物をやるという話が、京極堂ファンには興味深かった。

皆川さんらしい、華麗で、ちょっと狂気がかっていて、残酷でロマンチックな作品に仕上がっている。

物語●中村座の座元八代目中村勘三郎の娘・お菊は、正月の雑踏の中で見知らぬ若い男から声をかけられた。痩せた野良犬のようなその男源次は、〈馬場の芝居〉と呼ばれる見世物小屋の興行を仕切る親方の孫であった。妾の子であるお菊には、正妻の子である異母妹・お珊(さん)がいた。異母姉妹といっても、2カ月しか違わなかった。その頃、中村座は先代の勘三郎が亡くなり、その弟でお菊たちの父親が八代目を襲名して、2年がたったところ。勘三郎は、人気役者市川八百蔵の倅・伝九郎を養子にして、若太夫に据えていた。また、勘三郎の妹・お蘭の子で、お菊たちの従弟にあたる、美貌の役者・七三郎も跡継ぎ候補だった…。

目次■一 初春芝居町/二 泥まみれ/三 雛の約束/四 五月闇/五 連理引/六 昏い潮/七 百鬼の原/八 夏小袖/九 夢の火/十 裏切り/十一 蔵の中/十二 炎魔/十三 鳳凰の翼/十四 花櫓|解説 宇江佐真理

カバーデザイン:宇野亞喜良
解説:宇江佐真理
時代:明和六年(1769)正月
場所:二丁町(堺町、葺屋町)、采女ヶ原、惣十郎町、小舟町、黒船町、三光稲荷、本所押上村ほか
(講談社文庫・886円・99/09/15第1刷・519P)
購入日:99/09/15
読破日:00/07/17

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