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非道、行ずべからず

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非道、行ずべからず

非道、行ずべからず

(ひどうぎょうずべからず)

松井今朝子

(まついけさこ)
[時代ミステリー]
★★★★☆☆

江戸、中村座の炎上を描く時代ミステリー。十一代中村勘三郎が劇場主として登場。

作者の松井今朝子さんは、松竹で歌舞伎の企画や製作に携わった後に、『仲蔵狂乱』で第8回時代小説大賞(この賞は残念ながら現在はない)を受賞した時代小説作家。芝居小屋の様子や役者の心理、狂言作者の作劇術など、ディテールがリアリティがあって大いに楽しめる。

松井今朝子さんの『非道、行ずべからず』を読了。タイトルは、世阿弥の『風姿花伝』の中の言葉、「この道に至らんと思はん者は、非道を行ずべからず」から。中村勘三郎の家に代々伝わる扁額に「非道を行ずべからず」を掲げられていたという。何か一つの道を極めようと思う者は、断じてほかの道に行こうとしてはならない、という意味で、芸道を貫く者の言葉である。

本作品のテーマは「芸道」を貫くことが、「人の道」に対して「非道」であるとしたら…、どう対応するべきか。歌舞伎界という特異な世界を舞台に、歌舞伎興行のディテールやバックステージのドラマまで生き生きと描いた傑作。

六十を過ぎても第一線で活躍する「亀の太夫」こと、名女形の三代目荻野沢之丞の存在感が圧巻。その後継をめぐり争う兄弟、市之介、右源次や大部屋の年増女形の荻野沢蔵、桟敷番の右平次、立作者の喜多村松栄、成金の金主大久保庄助、楽屋頭取の中村七郎兵衛、帳元の善兵衛、大道具方の清兵衛ら、芝居関係者がみな個性的に描かれていて面白い。

物語●文化六年元日の夜、十一代目中村勘三郎が劇場主を務める、中村座が炎上した。芝居小屋の焼け跡の衣裳行李の中から正体不明の老いた男の死体が発見された。北町奉行所の同心笹岡平左衛門と同心見習の薗部理市郎は、下手人捜しに乗り出す。折りしも、女形の名優三代目荻野沢之丞が誰に名跡を継がせるか、話題になっていた…。

目次■なし

装丁:ミルキィ・イソベ
解説:豊崎由美
時代:文化六年(1723)正月
場所:堺町、岩代町、芳町、横山町、深川六間堀、呉服橋の北町奉行所、竹河岸ほか
(集英社文庫・838円・05/04/25第1刷・545P)
購入日:05/04/28
読破日:05/05/12

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