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算盤侍影御用 婿殿開眼

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算盤侍影御用 婿殿開眼
算盤侍影御用 婿殿開眼
(そろばんざむらいかげごよう むこどのかいがん)
牧秀彦
(まきひでひこ)
[武家]
★★★★☆

文庫書き下ろし。

公儀勘定所の平勘定をつとめる“算盤侍”の笠井半蔵が活躍する伝奇時代小説。半蔵は、御庭番の村垣家の生まれて、百五十俵取りの直参旗本の家に婿養子入りする。家付き娘の佐和が旗本八万騎の家中で随一の美貌の持ち主で才色兼備。

半蔵は、天然理心流の遣い手ながら、勘定所の役目に必須の算盤が大の苦手ということで、今の仕事では力をまったく発揮できないでいる。

 武士の使命は鍛えた技を以て悪と戦い、弱き民を救うことのはず。
 願わくば、関東取締出役の任に就きたい。
 埒もない算盤勘定を毎日繰り返すよりも、よほど将軍家の役に立つだろう。
 どのみち勘定所勤めの枠から出られぬのであれば、せめて自分に向いた職場に異動をさせてもらいたい。

(『算盤侍影御用 婿殿開眼』 P.28より)

笠井家代々の役目で無能、しかも二人の間に子どももいないということで、祝言から十年経った今では、妻の佐和からつまらないことで癇癪を起こされる毎日を送っている。

 入り婿ながらも美しい女を妻とした以上は、相思相愛になりたい。
 そう願えばこそ厳しい態度にめげることなく、十年間も辛抱を重ねてきた。

(『算盤侍影御用 婿殿開眼』 P.44より)

涙ぐましく、共感を覚えて、肩入れをしたくなる主人公。
その半蔵が勘定所のトップの勘定奉行の危難を救ったことから、密命が下される。

老中水野忠邦が改革を進める天保十二年が舞台ということで、鳥居耀蔵や矢部定謙、遠山景元らが登場し、すぐに続きが読みたくなるような第1巻になっている。

主な登場人物
笠井半蔵:百五十俵取りの直参旗本。勘定所平勘定
笠井佐和:半蔵の妻で家付き娘
梶野土佐守良材:勘定奉行
村垣範正:半蔵の実弟で、小十人組
お駒:呉服橋の煮売屋『笹のや』の女将
梅吉:煮売屋『笹のや』の板前
高田俊平:北町奉行所定廻同心で、半蔵とは同門の兄弟弟子
矢部左近衛将監定謙:小普請支配
遠山左衛門尉景元:北町奉行
筒井伊賀守政憲:南町奉行
鳥居耀蔵:目付

物語●御庭番の村垣家から、百五十俵取りの直参旗本笠井家に婿養子入りした半蔵は、旗本家中で随一の美貌を持つ妻・佐和と祝言を挙げて十年。役職は勘定所の平勘定だが、佐和は代々の役目に誇りをもつ才色兼備の家付き娘。半蔵は、剣は天然理心流で鍛えたものの、勘定所で必須の算盤は大の苦手で、役人としての無能さを佐和に叱責される毎日。
そんな折、登城中の勘定奉行梶野土佐守が五人の刺客に急襲される場に遭遇し、得意の剣で土佐守を救う…。

目次■第一章 婿殿の剣難女難/第二章 婿殿と板前と二人の女/第三章 勘定奉行からの密命/第四章 それぞれの本音/第五章 呉越同舟はぎこちなく

カバーイラストレーション:百鬼丸
カバーデザイン:若林繁裕
時代:天保十二年(1841)二月
場所:神田駿河台、江戸城大手御門、呉服橋、下谷二長町、山谷堀、ほか
(双葉社・双葉文庫・600円・2011/01/16第1刷・294 P)
入手日:2012/05/15
読破日:2012/05/31

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