続巷説百物語
(ぞくこうせつひゃくものがたり)
京極夏彦
(きょうごくなつひこ)
[ホラー]
★★★★☆☆
♪小悪党小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、考物の先生こと山岡百介らが活躍する『巷説百物語』の続編。
最近、寝る前に30分ほど読み続けていた、京極夏彦さんの『続巷説百物語』を読了した。文庫版とはいえ、760ページ余りの分厚い本なので、布団の中で読むのには適しているとはいえない。しかも、妖怪をモチーフにしているので、就寝前の読書向けとはいえないが、面白くて途中で読むのを止めるのが苦しかった。
第130回直木賞受賞作品だが、続編で賞を取ること自体はきわめてまれなことではないだろうか。前作『巷説百物語』ももちろん面白かったが、さらにスケールがアップして、主要キャラクターについても深く描き込まれていた。前作はプレリュード(序章)で、すべてはこの続編のためにあったといえる。謎・怪異の部分がすべて明らかになり、独立して描かれていた物語が、収斂していく京極作品特有のカタルシスが満喫できる。もちろん、『続巷説百物語』から読んでも大いに楽しめる。
物語●野鉄砲」考物の先生こと、山岡百介は、実兄で八王子千人同心の山岡軍八郎に呼び出されて、八王子に向った…。「孤者異」山岡百介は、小塚原の仕置場を目指したが、躊躇してなかなか真直ぐ向えなかった。その途中で、山猫廻しのおぎんと出会った…。「飛縁魔」山岡百介は、神田鍛冶町の貸本屋平八の店を訪れ、平八から丹後と若狭の間にある北林藩で起こった怪異な事件の話を聞いた…。「船幽霊」山岡百介は、おぎんを伴って讃岐国に足を踏み入れた…。「死神 或は七人みさき」山岡百介は加賀国小塩ヶ浦から、事触れの治平と四玉の徳次郎の二人と一緒に江戸へ戻ってきた。事触れの治平は元盗賊で、徳次郎は呑馬術なる奇異な妙技を体得した放下師だった…。「老人火」山岡百介は、事件以来六年ぶりに北林藩領内を訪れた…。
目次■野鉄砲(のでっぽう)|孤者異(こわい)|飛縁魔(ひのえんま)|船幽霊(ふなゆうれい)|死神 或は七人みさき|老人火(ろうじんのひ)|解説 恩田陸