蘭と狗 長英破牢
(らんといぬ・ちょうえいはろう)
中村勝行(黒崎裕一郎)
(なかむらかつゆき・くろさきゆういちろう)
[捕物]
★★★★☆☆
♪第六回時代小説大賞受賞作。作者は、俳優の中村敦夫さんの実弟で、TVの「必殺」シリーズや「太陽にほえろ!」の脚本家として活躍された人。別名義・黒崎裕一郎でも、時代小説を発表されている。
高野長英ものというと、主人公の悲惨な末路が嫌で、今まで敬遠していたが、文庫化(百鬼丸さんの装画がいい)を機に読む。これが面白い。逃げる蘭=蘭学者・長英、追う狗=岡っ引・瓢六の逃走劇にハラハラドキドキ。同時に、二人の人間像も余すところ描かれていて、深みを与えている。
高野長英を匿うことが、当時の蘭学を学ぶものとってのリトマス試験紙であったり、鳥居の密偵・本庄茂平次や国定忠治が登場したり、と興味深いところも多い。
物語●天保十年五月、岡っ引瓢六は、同心の小林藤太郎と、蘭学者・高野長英捕縛に向かった。二人は、御目付役・鳥居耀蔵の息のかかった南町奉行所与力・大内源兵衛の命により、長英が自首する前に、召し捕ってしまおうという、鳥居の魂胆を実現するためだった。首尾よく瓢六らは、長英を捕縛することができたが…。
目次■第一章 蛮社遭厄/第二章 夢物語/第三章 走狗/第四章 牢名主/第五章 破獄/第六章 護寺院ヶ原/第七章 鳴らない鈴/第八章 追捕/第九章 ひかげ道/第十章 潜行流転/第十一章 雌猫/第十二章 もろともに死す|解説 菊池仁