地獄島 お役者捕物帖
(じごくじま おやくしゃとりものちょう)
栗本薫
(くりもとかおる)
[伝奇]
★★★☆☆☆
♪「捕物帖」とついているが、まぎれもない伝奇小説だ。題名に偽りありって感じだが、これには訳がある。前作にして第一作の『吸血鬼』が連作形式の純然たる捕物帖らしい。(というのも、その作品が現在入手困難で未読。新潮社さん、何とかして!)で、この捕物帖の探偵役であるお役者嵐夢之丞にスポットを当てたのが本書だ。
ウーン、でも、第一作を読んでいないのって大きなハンデだなぁ。少なくともあと1.5倍くらいは楽しめたのに。
栗本さんというと、超大河小説作家っていうイメージだが、本書もその片鱗が垣間見れる。気持ちいいくらいストーリーが広がりをもって展開していく。
ヒロインの切支丹お蝶のキャラクターが魅力的だ。
地獄島のある伊奈国平野って、栗本さんはどこを想定しているのかな。西国で二十万石で、海と山があり、島があるっていうと、和歌山とか徳島あたりかな。
物語●人気女形嵐夢之丞が忽然と消えた。江戸市中で夢之丞に似た美女が次々惨殺されていく。夢之丞を慕う女スリ切支丹お蝶は、夢之丞と瓜ふたつの商家の女房お時の難事を救ったことから事件に巻き込まれていく…。
目次■琅かんの女/浅草奥山あたり/碧眼の鬼/廊下の怪/花の色/血まみれ百合/蝶の道行/死の家/おさよ登場/地獄屋敷/地獄の番人/水牢/死の顎/幽霊太夫/謎の浪人/雨の夜話/めぐる糸/夢の浮橋/紅蓮地獄/鬼たちの夜/紅毛鬼/旅立ち―地獄島へ/謎の老人/平野の夜/むかしがたり/お蓮地獄/火の島/船を出す/嵐の夜/月下繚乱/再会/地獄花/紅蓮の果/浄玻璃の鏡/呪いの島/大団円/あとがき/解説