陽炎の旗
(かげろうのはた)
(きたかたけんぞう)
[南北朝]
★★★★
♪大傑作『武王の門』の続編。残りのページを惜しむように読んだ。前作より20年後、登場人物も懐良親王の子の都竹月王丸とその子竜王丸、金(堀田)竜広、今川了俊・仲秋ら。敵役が全盛期を迎える室町幕府の将軍足利義満と管領斯波義将ということで相手にとって不足なしって感じだ。ニヒルなもう一人の主人公・来海(足利)頼冬や大野武峰らニューキャラもうれしい。
ただ、ストーリー展開を急ぎすぎて、主人公への共感がもう一つ深まる前に終わってしまったことが残念。あと、縄田氏(時代小説でもっとも信頼できる道先案内人)の解説がいつもよりも思い入れが強すぎ、読後感をシラケさせている。
物語●時は三代将軍・義満の治世(南北朝時代で二つの年号が存在しているせいか、この作品では年号は出てこない)。将軍の従弟にあたる剣の達人・来海(くるみ)頼冬は、血筋ゆえに刺客に追われる日々を送っていた。その前に現れた水軍の頭目月王丸・竜王丸親子。彼らは、南北朝の朝廷を超えて日本の国王を目指した義満の野望を打ち砕くべく、玄界灘一帯で奇襲と抵抗に明け暮れていた。頼冬は刹那的に行きながらも、やがてそこに、自身の行く末を見出す。南北朝統一という夢を追った男たちの戦いを描く。