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埋もれ火

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埋もれ火

埋もれ火

(うもれび)

北原亞以子

(きたはらあいこ)
[幕末]
★★★★☆

最近、読書のスピードが落ちてしまい、ツン読状態がひどくなった。大好きな北原さんの本も未読のものが4冊を数えている。何とかせねば、と、いささか焦っている。この本は、坂本龍馬の妻・お龍や千葉佐那子、高杉晋作の愛妾・うのなど、幕末維新の激動に翻弄された女たちを描いた短編集。歴史というのが、勝者のもの、生き残った者のものであることを痛感させられる。とくに、「武士の妻」と「正義」、「お慶」が読後に強い印象を残す。

「正義」を読んでいたら、北方謙三さんの『草莽枯れ行く』(集英社)が、「お慶」を読んでいたたら、白石一郎さんの『天翔ける女』(文春文庫)が思い出されてならなかった。

ところで、本のカバーがいつもの蓬田さんとは違う装幀だなと思って、表紙をめくると、シャープな斜線と鮮やかな配色に特徴がある画が描かれてあり、やはりそこは蓬田ワールドだった。

物語●「お龍」明治三十年、西村つると名乗る女性のもとに元海援隊の隊士の息子が訪ねてきた…。「枯野」明治二十五年、千葉灸治院の看板を掲げる、佐那子の長屋に、人力車の乗って白髪まじりの紳士と夫人と見える女がやって来た…。「波」慶応四年、近藤勇の愛妾・おさわの家の戸を、丑満刻に叩く者がいた…。「武士の妻」安政六年、一橋家の祐筆をつとめる松井八十五郎の娘・ツネは、多摩郡の豪農・宮川久次郎の三男で、天然理心流の剣術を学び、宗家三代目近藤周助の養子・島崎勇に嫁ぐことになった…。「正義」照のもとに、見知らぬ男が訪ねてきて、夫の小島四郎(相楽総三)が、偽官軍として処刑されたと知らせてくれた…。「泥中の花」庄内藩士堀井達三郎は、清河八郎の妻・お蓮に横恋慕し、清河に対してストーカー行為をしていた…。「お慶」熊本藩士遠山一也が、大浦屋のお慶を訪ねてきたのは、明治四年のことだった…。「炎」赤間関で廻船問屋を営んでいた小倉屋の白石正一郎を、薩摩から藤代亨という若者が訪ねてきた…。「呪縛」高杉晋作の墓を守るうのは、飲みたいのをがまんできずに、一升徳利を抱えて酒を買いにでかけた…。

目次■お龍|枯野|波|武士の妻|正義|泥中の花|お慶|炎|呪縛

カバー画:蓬田やすひろ
カバーデザイン:蓬田やすひろ
時代:「お龍」明治三十年、「枯野」明治二十五年、「波」慶応四年、「武士の妻」慶応四年、「正義」慶応四年、「泥中の花」文久二年、「お慶」明治四年、「炎」明治十三年、「呪縛」明治十四年
舞台:「お龍」東京・海軍病院前、「枯野」千住、「波」三河町、「武士の妻」多摩郡上石原村、「正義」赤坂、「泥中の花」亀戸村、「お慶」長崎、「炎」赤間関、「呪縛」吉田村ほか
(文藝春秋・1,524円・99/10/20第1刷・288P)
購入日:99/10/30
読破日:99/12/27

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