傷 慶次郎縁側日記
(きず・けいじろうえんがわにっき)
北原亞以子
(きたはらあいこ)
[市井]
★★★★☆
♪第一話は、短編集「その夜の雪」にも収録されている。この話については二度目になるが、初読のときとちょっと読後感が違った。二話目以降の物語が人情味溢れるほのぼのとしたものになっているためかもしれない。
森口慶次郎ものとしては、「雪の夜のあと」(読売新聞社刊)という作品もある。
小さい頃、貧しかったせいか、こういう物語はとても懐かしい。
◆主な登場人物
森口慶次郎:元南町奉行所同心で、根岸の寮番
三千代:慶次郎の娘
辰吉:慶次郎の手先
晃之助:吟味方与力の三男で、慶次郎の養子
文五郎:山口屋の番頭
島中賢吾:南町奉行所定廻り同心
吉次:北町奉行所の手先
佐七:寮の飯炊き
美濃屋清兵衛:日本橋本石町の扇問屋主人
おとき:清兵衛の女房
おかよ:美濃屋の女中
松太郎:谷中の酒屋の息子
岩松:千駄木の植木屋
おきわ:吉次の妹
菊松:おきわの夫で蕎麦屋
源太:空樽売りの少年
おしん:源太の向かい家の娘
佐兵衛:味噌問屋の息子
橋田佑介:南町奉行所同心
太兵衛:京橋弓町の岡っ引で、賢吾の手下
七五郎:蔵前の札差・越後屋藤蔵方の番頭
伝七:蛙の伝左と呼ばれる京橋界隈の鼻つまみ
園田兵太郎:御家人くずれ
皐月:晃之助の妻
卯之吉:手間取り大工
おせん:卯之吉の女房
梶右衛門:新黒門町の裏店の差配
おたみ:よろず稽古所の師匠
平吉:おたみの愛人
仁右衛門:聖天町の長屋の差配
おはる:仁右衛門が面倒をみる娘
和助:おはるの父で池袋の百姓
伊太八:空巣狙いの盗っ人
豊蔵:空巣狙いの盗っ人
壱次郎:山谷堀の瓦屋
秋元右近:小普請組の御家人の嫡男
諏訪新五郎:右近の剣術仲間
村越勇三郎:右近の剣術仲間
翁屋与市郎:古道具屋
彦三郎:新大坂町の傘問屋清水屋の養子
おはつ:清水屋の女中
おきち:思案橋たもとの縄暖簾の女
庄野玄庵:八丁堀の医者
おゆみ:神田連雀町の長唄の師匠
中次郎:紙問屋の若旦那
物語●「その夜の雪」婿取りが決まっていた慶次郎の娘・三十代が何者かに暴行されて、帰ってきた…。「律義者」同心を辞め、寮番を勤める慶次郎の隣家で何やら揉め事が…。「似たものどうし」吉次は空樽拾いの少年と知り合った…。「傷」慶次郎の知り合いの番頭と、町内の鼻つまみものの二人が弓町の角でぶつかって怪我をしたという…。「春の出来事」慶次郎は、通りで突き飛ばして足首を捻らせてしまった女を見舞った…。「腹痛の妙薬」腰を痛めた慶次郎が医者に出かける途中で出くわしたものは…。「片付け上手」知り合いの煙管を盗んだ娘は、みんなから半人前と言われていた…。「座右の銘」“貧乏人に迷惑をかけぬこと”“身内に迷惑をかけぬこと”を座右の銘にしていた空巣狙いがいた…。「早春の歌」小さな事件をきっかけに、慶次郎は、剣術道場通いの若者たちと親しくなった…。「似ている女」慶次郎のもとに持ち込まれた相談事とは…。「饅頭の皮」慶次郎は通りで、顔色の悪さが尋常でない女を見かけた…。
目次■その夜の雪|律義者|似たものどうし|傷|春の出来事|腹痛の妙薬|片付け上手|座右の銘|早春の歌|似ている女|饅頭の皮
装幀:新潮社装幀室
時代:明記されずBR> 場所:八丁堀、霊岸島、根岸、南小田原町、南鍛冶町、本所相生町、下谷町、聖天町、瓦町、代田村
(新潮社・1,700円・98/09/20第1刷・342P)
購入日:98/09/20
読破日:98/09/28