風よ聞け 雲の巻
(かぜよきけ くものまき)
(きたはらあいこ)
[幕末]
★★★☆☆
♪池波正太郎の「その男」などで知られる、心形刀流の名剣士・伊庭八郎を彼を慕う女たちの視点から描いた、書き下ろし長編。作者の得意な幕末江戸もの。「雲の巻」という通りで、話の途中という感じが否めないのが残念。
江戸の四大道場の一つ、心形刀流の伊庭道場の嫡子として生まれ、小さい頃は病弱で、長ずるに「伊庭の小天狗」の異名を持った、伊庭八郎。崩壊する幕府を冷静に見ながら、最後まで己の信念に従って筋目を通す生き様が、清々しい。
物語●大政奉還、王政復古で騒然とする江戸。七十俵五人扶持の御徒士小笠原仙右衛門は、上総への疎開を、息子一馬は最後まで闘うことをそれぞれ主張し、一家には諍いが絶えない。娘千遠は、遊撃隊に加わり上洛した婚約者佐々村恭平よりも幼なじみの伊庭八郎の帰りを心待ちにしていた。
一方、江戸の北国、吉原の御職・小稲は川越の豪商からの身請けの話を断る。三年前に惚れた伊庭八郎のことが忘れられないのだ。