西郷盗撮
(さいごうとうさつ)
風野真知雄
(かぜのまちお)
[歴史ミステリ]
★★★★☆
♪装幀は、辰巳四郎さん! ミステリー作品ではおなじみだが、時代小説では珍しい。池波正太郎さんの『雲霧仁左衛門』とか、そんなになかったような記憶がある。
西郷隆盛の写真がないというのはすごく意外だった。上野の銅像のイメージが強いせいだろうか。でも、おかげでこんな面白い本が出てきたのだから感謝しなくては。
西郷隆盛のほか、その弟子でボディガード役の桐野利秋(人斬り半次郎)、勝海舟らも登場する。
主人公の志村悠之介は、北辰一刀流の切紙を得ながらも、維新の時は、十代半ばと若すぎて参加できず、若さを持て余し、当時の最新の技術・写真に青春を賭けていた。何やらヘミングウェイみたいな感じがする。著名人の盗み撮りということだから、パパラッチというべきか。
悠之介と薩摩出身で朝野新聞に勤める福崎伸吾の友情が爽やかで泣かせる。
物語●東京府浅草の観音様の裏手にある井上銀杖写真館に、川路閣下と呼ばれる男がやってきて、仕事を依頼する。鹿児島に帰った西郷隆盛の写真を撮ってほしいという。市中に出回っている写真はすべて偽者だという。銀杖は、その仕事を弟子の志村悠之介に押し付ける。悠之介は、元幕臣で北辰一刀流の達人だった。悠之介は、二十円(なりたての巡査の月給が四円)という準備金と最新の写真のタネ板を与えられ、鹿児島に向かうことになる…。
目次■序/第一章 密命/第二章 潜入/第三章 つむじ風/第四章 不穏な空気/第五章 裸像/第六章 謎の襲撃者/第七章 西郷暗殺計画/第八章 陰の力/第九章 撮影成功/第十章 決闘/第十一章 再会/結/あとがき