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鮫

(さめ)
加野厚志
(かのあつし)
[幕末]
★★★★☆☆

『龍馬慕情』が面白くて入手したが、読まずに3年間もツン読状態にしてしまった。ゲストブックに記帳いただいた辰巳典子さんのおすすめで、そろそろ読みごろと思っていたところに、加野さんから『沖田総司・魔道剣』の解説のお話をいただいた。
『ジョーズ』を彷彿させるスリリングな鮫狩りシーンから物語は始まる。ホホジロ鮫は、その呼び名どおりに両頬と腹色が白く、背面は深みがかった灰色をしている。一平と直人の頬にも不穏な白っぽい痣がぴったりと張りついていて、血に飢えた海の支配者・ホホジロ鮫に似ていた。

『龍馬慕情』で衝撃的な登場を果たした、幕末最強のテロリスト・神代直人(こうじろなおと)を主人公にした幕末小説が本編『鮫』である。神代直人は、大村益次郎(司馬遼太郎さんの『花神』の主人公)の暗殺犯として知られている。

重く暗いものを想像していたが、読み始めてすぐに物語に引きこまれた。良い意味で予想を裏切り、恋あり冒険ありの爽快な青春小説に仕上がっている。

蛇足だが、加野さんの高校時代の恩師・伊賀洋昭先生(『沖田総司・非情剣』の解説で加野ファンにはおなじみ)が、主人公の直人の剣術の師として登場するところが微笑ましい。

物語●十三歳の直人は、父・一平とともに周防灘で、ホホジロ鮫狩りにでかけた…。三年前、直人は海女の母と反小舟であわびのもぐり漁にでかけて、巨大なホホジロ鮫に襲われ、海に投げ出された。海女のさちよは直人の身代わりとなって鮫に食い殺された。妻を亡くした一平は、右腕に妻の名を彫り込んで、妄執にとりつかれ、生き残った直人をいたわらず、恨みがましい視線で日夜責め続けた。人柄は無惨なほど一変し、酔うと直人に鉄拳をふるった。父子二人きりの生活は殺伐とし、直人はじっと耐えた。身代わりとなって死んだ母・さちよがひたすら恋しかった。離反した父子の心を唯一結ぶものは、ホホジロを殺すことだった…。

目次■一章 鮫狩り/二章 武蔵の剣/三章 海賊城/四章 都落ち/五章 高杉挙兵/六章 海峡/七章 龍馬暗殺/八章 斬奸状/終章 引潮/あとがき

装幀・装画:塩澤文男
時代:安政三年(1856)9月
場所:周防・佐波村、鋳銭司村、伊予・火振島、下ノ関、京・妙法院、鷹司邸、秋吉台ほか
(集英社・1,900円・97/11/30第1刷・349P)
購入日:97/12/18
読破日:01/04/30

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