(つきのうらそうしょうくじのおきがき)
(いわいみよじ)
[室町]
★★★★☆☆ [再読]
♪第10回松本清張賞受賞作。単行本刊行時に一度読んでいるが、読書録を残していなかったので、再読にチャレンジ。室町中期の近江の農村を舞台にした土地をめぐる公事(裁判)という、おそろしく地味なテーマを扱っていながら、リアリティーに富んだ一級のエンターテインメントに仕上げている。とくにラストに向かって、公事のプロセスが丹念に描写され、その一方で代官源左衛門の復讐じみたような圧政ぶりが生き生きと描かれていて、面白かった。
この本を読んでいて、中世の近江地方は京や比叡山にも近いこともあり、歴史において重要な地だったのだなあと思った。そういえば、戦国時代以前は、近江が歴史小説の舞台になることも少なくない。
ブログ◆
2006-05-01 地味ながら圧倒的な迫力の農民時代小説
2006-04-24 岩井三四二さんと室町時代小説
物語●室町時代中期、琵琶湖の北端の惣庄月ノ浦。はるか昔から開墾してきた米舞、苧ヶ端の耕地をめぐって隣村の高浦と争いを続けてきた。そんな折、京の土倉の手代源左衛門が高浦に荘園の代官としてやってきた。源左衛門は、年貢の取り立てが厳しく、住民を合戦に賦役に酷使し、搾取の限りをつくした。そして彼には幼くして親に捨てられ、月ノ浦を追われた過去があった…。
目次■嵐の前/代官/申状/相論/寄せ沙汰/山門/対決/落居/日嵐/解説 縄田一男