渡世人
(とせいにん)
石月正広
(いしづきまさひろ)
[股旅]
★★★★☆
♪国定忠次時代の渡世人(アウトロー)を主人公とした時代小説。国定忠次の浪曲や芝居を知らなかったせいか、主人公の渡世人・浅太郎(板割の浅太郎)が実在の人物であるとは思わなかった。浅太郎の槍の修業時代の話ややくざの世界に入るきっかけなど、いろいろと興味深い一冊。
一人の渡世人を通して、江戸末期から明治初期を描いた時代小説。アウトローであり、ときには最下層の人々の間で生活した主人公だけに、逆に彼を通して、政治や世情がビビットに伝わってくる。
物語●文政六年、八歳の浅太郎は、日光例幣使街道木崎宿(上州)で、叔父の勘助といっしょに例幣使一行の行列を沿道で見た。わざわざ権門駕籠を揺らして、戸をあけてまろび出てきて、ごろりごろりと二回転して、蝦蟇のように這いつくばる、泥鰌髭で生白い公家の顔を見て、気味悪く恐ろしい思いをした…。それから八年、十六歳になった浅太郎は父の屋根葺きの仕事を継いで働き始めていた。その頃、父は太織縞の織りで稼ぐ女房の稼ぎで、飲む打つ買うの三道楽で、仕事もせずに昼は寝てばかりいた。そんなぐうたらな父がある日、賭場で知り合った佐野伴内という素浪人を家に連れて来た…。
目次■一章/ニ章/三章/四章/五章/六章/七章/八章/九章/あとがき