やさぐれ 品川宿悪人往来
(やさぐれ しながわじゅくあくにんおうらい)
犬飼六岐
(いぬかいろっき)
[青春]
★★★★☆
♪駆け出しやくざの矢吉を主人公にした、大江戸青春小説。 「いつまでも半人前じゃいられねえ」と矢吉が仕掛けた喧嘩がもとで、酔っ払いの用心棒・やまたの彦六、町一番の美貌を持つ七変化の女郎・胡蝶も巻き込んで、暗黒街と化した品川に血の雨が降る…。
犬飼さんというと、尾張藩戸山下屋敷内の宿場町を描いた『蛻(もぬけ)』で第144回直木賞候補になり、今注目される時代小説家。『筋違い半介』『叛旗は胸にありて』など、反骨心を持った主人公の生き方を描くことが多い。『やさぐれ』の矢吉も、若者らしい反発心に溢れて魅力的。
『やさぐれ』では、東海道最初の宿場町・品川宿を舞台にしているが、品川宿が、南北の本宿と徒歩新宿(かちしんじゅく)の3つに分かれた経緯がわかり、江戸好きの観点からも興味深い。
主な登場人物◆
矢吉:やくざの三下
隆次:矢吉の兄貴分
嶋屋藤兵衛:口入屋「八ツ嶋」の主人
惣五郎:人足部屋の賭場の代貸
竹治:口入屋「八ツ嶋」の手代
豊太:矢吉の兄貴分
三樹蔵:矢吉の兄貴分
寅之助:矢吉の兄貴分
嘉右衛門:飯盛旅籠大松屋の主で北宿の顔役
市之助:嘉右衛門の舎弟
木村左門:うわばみの異名をもつ大松屋の用心棒
長谷部彦六:呑兵衛で酒乱の浪人
富蔵:清水井の賭場の代貸
孝七:清水井の若い衆
胡蝶:煮売茶屋(女郎屋)菊屋の売れっ子女郎
万蔵:物乞い
海鎮:旅の僧侶
閻魔の寛十郎:盗賊の頭
おりく:矢吉の妹
作蔵:矢吉の隣家の次男
物語●矢吉は百姓を嫌って一年前に村から品川宿に出てきたばかりで、駆け出しのやくざだが、ひとかどの男になることを目指す。矢吉が仕掛けた小さな喧嘩はやがて町同士の抗争にまで発展してしまう…。
目次■うわばみ左門/見返り胡蝶/物乞い万蔵/化け入道海鎮/閻魔の寛十郎/泣き虫おりく/三下矢吉/解説 細谷正充