幕末ガンマン
(ばくまつがんまん)
生島治郎
(いくしまじろう)
[幕末]
★★★☆☆
♪生島さんの小説は、初めて読んだ。確か、ミステリ・サスペンス畑の人(かつて「エラリークインズ・ミステリ・マガジン」の編集長)だったような気がする。時代小説を書いていたのが意外で、つい購入する。
高杉晋作は、幕末で、坂本竜馬と並んで、爽やかなイメージのあるキャラクターだ。おそらく、維新の成功の果実を貪ることなく、絶頂期に亡くなったからであろう。また、その野放図さ、ぼんぼんぶり、私利私欲のなさがいっそう、そう感じさせるのかもしれない。そういえば、池宮彰一郎さんの『高杉晋作』も爽快感のある作品だった。
本作品では、主人公捨の上海でのガンマン修業ぶりが面白い。師匠のアル中の南部人ガンマン・リックと相弟子の中国人ボーイ・猫(マオ)、デント商会のステイとシーラの父娘、シーラに恋心をもつ英軍のメイラー大尉、リックの下宿先のおかみ・ビッグママなど、興味深い面々と当時の上海の町が活写されている。
物語●上海行きの幕府御用船・千歳丸の船上で、高杉晋作は、ふとしたことから水夫の捨(すて)と友情で結ばれることになる。捨ては、天涯孤独の身で、メリケン語を喋り、ガンマン志望という変わり種だった。捨の上海でのガンマン修業と、晋作との友情、激動の時代を描く時代ロマン。
目次■ヒュースケンの弟子/上海見聞録/手槍鬼(ザ・ガンマン)/風車の剣/ボディガードの用心棒/夷狄の剣豪/プレゼントは二十二口径/もっとも危険な獲物/花火炸裂/弔音轟々/解説 郷原宏