鬼勘犯科帳 初代火盗改・中山勘解由
(おにかんはんかちょう・しょだいかとうあらため・なかやまかげゆ)
池端洋介
(いけはたようすけ)
[捕物]
★★★☆☆☆
♪慶長年間に創業し、その白酒は江戸時代から庶民に親しまれ、「山なれば富士、白酒なれば豊島屋」と詠われて、江戸時代からの伝統を守ってきた老舗の豊島屋本店。日ごろより大変お世話になっている豊島屋本店の吉村俊之さんから、面白い時代小説を紹介していただいた。
池波正太郎さんが亡くなられてから16年。もう、『鬼平犯科帳』の新作が読めないんだなと思うと、時折なんとも切なくなる。いくつかの作品で、長谷川平蔵が登場することがあった。それは、池波さんの鬼平とはまったく別のキャラクターとして描かれてきた。オリジナリティということを考えれば、当然のことではあるが…。
池端洋介さんの『鬼勘犯科帳―初代火盗改・中山勘解由』を読了した。初代の火盗改の中山勘解由直守を主人公に据えているが、多くの点で、『鬼平犯科帳』を想起させてくれる。
作品 鬼平犯科帳 鬼勘犯科帳 作者 池波正太郎 池端洋介 火盗改就任 天明七年(1787) 寛文十二年(1672) 上司 若年寄・京極備前守高久 大目付・大岡佐渡守忠勝 若い頃の呼び名 本所の銕 助六郎の兄ぃ 家紋 左三藤 枡形の内に月 お惚けキャラ 木村忠吾 青木弥之助 昔なじみの助っ人 相模の彦十 唐犬の権兵衛 密偵 大滝の五郎蔵 旋風の文左 たまり場 軍鶏鍋五鉄 軍鶏鍋鴛鴦屋
三田村鳶魚さんの著書によると、中山勘解由は容赦のない仕事ぶりだったようである。「この勘解由は元来なかなかの仏者でありました。それが六方男立てのあばれ者どもを鎮撫する命を受けた時分に、すぐに仏壇をぶちこわして、今日からはもう慈悲では治らない、というので、少しでも風体の変な者は、取っつかまえて詮議もせずに斬ってしまった。それですから例の旗本奴・町奴の検挙を二度ほどやりまして、首尾よく鎮静させることが出来たといわれております」(『三田村鳶魚全集 第13巻』)
物語●「亡者狩り」旗本奴の平手弥三郎は、仲間と浅草寺裏で、幼い姉弟も含めた四人連れの家族を斬殺し、「この俺に、斬れぬものなどないのだ」とうそぶいた。御先手鉄炮組頭中山勘解由は、旧知の御家人野々宮五兵衛を見舞った。五兵衛の嫡男七郎左衛門は、同僚三人に斬り殺されたのだった…。「鶉の権兵衛」御先手鉄炮組の中山勘解由配下の同心青木弥三郎は、浜松町の近くで火事に遭い、そこで九人組の火付け盗賊を見かけた…。「おしどり義賊」中山勘解由は、密偵の雁金の喜久次とキス釣りに出かけて、仲むつまじく釣りに興じる夫婦ものを見かけた。夫の方は喜久次が賭場で「何か魂胆がある」と目をつけて、追っていた男・文左だった…。
目次■亡者狩り|鶉の権兵衛|おしどり義賊