城のなかの人
(しろのなかのひと)
星新一
(ほししんいち)
[短編]
★★★★☆
♪一度、感想を読書録を書いたのですが、誤って消してしまったので、書き直しました。前回書いたものと違っています。
1998年2月に亡くなられたSFショートショートの神様・星新一さん(本当に神様になってしまわれた。合掌)の珍しい時代小説作品集。隠れた名作という感じで、ホントに面白かった。常々、時代小説の面白さの一つに、ある決まりごとの中で、想像力を自由に膨らませ、虚構を作り上げることであると思っているが、星さんは、さすがにその特性をうまく捉えている。
とくに表題作の「城のなかの人」が秀逸。秀頼の誕生から、大坂城落城・自刃までを、秀頼とかかわりのある16人の人物の眼を通して描くというストーリー展開がいい。また、「春風のあげく」と「すずしい夏」は、時代小説に舞台を借りたショートショートだ。
「正雪と弟子」の結末の付け方も時代小説畑の作家には書けないようなもので、面白かった。
物語●「城のなかの人」美に囲まれた城の中で暮らす秀頼にとって、唯一美と逆のものがあった。それは予告なしに出現し、静けさと調和をかき乱す一人の老人であった…。「春風のあげく」北国のある藩の重臣の息子・忠之進は、春風に誘われて隣家の娘と愛を交わしてしまう…。「正雪と弟子」二十歳の浪人・林武左衛門は、由比正雪に師事していた…。「すずしい夏」北国のある藩では、米の値上がりの動きにつられて、備蓄米の2/3を売ることにしたことから…。「はんぱもの維新」小栗上野介忠順(ただまさ)は、彼の政治を邪魔する“はんぱもの”たちを憎んでいた…。
目次■城のなかの人|春風のあげく|正雪と弟子|すずしい夏|はんぱもの維新|解説 武蔵野次郎