(はやぶさしんぱちごようたび2・なかせんどうろくじゅうきゅうつぎ)
(ひらいわゆみえ)
[捕物]
★★★★☆
♪東海道編が面白く、家族も楽しんで読んでいたので、今度は中仙道編をゲット! 京が物語の発端で、雅な雰囲気がして、正月に読む本にピッタリといったところ。主人公の南町奉行所内与力の隼新八郎は、絵に描いたような美丈夫(好い男)のせいか、とにかくモテる。
本編の「御用帳」シリーズでは、妻の郁江、お奉行付きの女中お鯉、湯島の踊りの師匠・小かんに恋心をもたれているが、『中仙道六十九次』でも、女性たちにモテモテである。鷹司家の遠縁の姫で御所仕えの女官・雪路、禁裡付同心の寡婦小篠、医師岡本元斎の娘で医学を学ぶみゆきに思いを寄せられる。ほかにも想定外の人から恋われることになる。
日常生活とは違う旅を通じて、人の気持ちはどうなるのか? 旅先の風物とともに、登場人物たちの言動が楽しめるのが道中ものの面白いところ。時代小説では、これに悪漢や謎の人物が入り混じってチャンバラ劇(剣難)が繰り広げられるのが定番。『はやぶさ新八御用旅』でもそんな見せ場が用意されていて、最後まで大いに楽しめる。
東海道はいろいろな作品に描かれることが多いが、中仙道はそれほど多くないので、道中をたどるだけでも興味深い。昨年夏に訪れた、松本、諏訪湖もチラッと出てきて、旅情もあって、快い読了感が残った。
物語●江戸町奉行根岸肥前守鎮衛の命で、東海道五十三次を上り、京にやってきた、内与力を務める隼新八郎。根岸肥前守と昵懇の関白太政大臣鷹司輔平の用人、細川幸大夫に喜寿の祝物を届けた後、京都所司代酒井讃岐守の依頼で、御所役人の不正の探索を、御所女官の雪路の協力を得て行うことに……。
目次■第一話 京の夢/第二話 近江路にて/第三話 美濃路を行く/第四話 木曾路の秋/第五話 信濃路追分節/第六話 新八郎女難