王子稲荷の女 はやぶさ新八御用帳
(おうじいなりのおんな・はやぶさしんぱちごようちょう)
平岩弓枝
(ひらいわゆみえ)
[捕物]
★★★★
♪シリーズ第9巻。佐多芳郎さんの逝去により、気になっていた装画は、今回より風間完さんが担当。しっとりとした江戸情緒が感じられ、また一味違う「はやぶさ新八」のスタートだ。
主人公は、南町奉行の根岸肥前守鎮衛(『耳嚢』でおなじみの名奉行)の内与力(うちよりき)・隼新八郎。内与力とは、奉行直属の家臣で、いわば秘書役である。
「里神楽の殺人」の話が華やかさがあってよかった。
「はやぶさ新八」シリーズの魅力の一つは、新八郎をめぐる三人の女たち、妻の郁江、根岸肥前守の奥付きの女中・お鯉、湯島の岡っ引きの勘兵衛の娘・小かんのトライアングル。今巻では、郁江の出番が少なくてちょっと残念。
『新版 江戸から東京へ(一)』(矢田挿雲著・中公文庫)に、根岸肥前守が谷中延命院事件を解決したことが記述されていた。この事件が今後の「はやぶさ新八」の活躍のクライマックスになっていくのだろうか…。
物語●「王子稲荷の女」年始にやってきた鬼勘と藤助は、新八郎に、大晦日に王子稲荷に現われた狐火の話をした…。「寒紅梅」新八郎の友人・落合清四郎がまもなく父親になるという…。「里神楽の殺人」氷川神社の里神楽で「大蛇退治」の上演中に殺人事件が起こった…。「柳と蛙」三味線堀に陰間の若い男の死体が浮いているのが見つかった…。「夕顔観音堂」浜町河岸で新八郎は、舟に乗った尼僧に見とれていた…。「あやかし舟」涼み船で賑わう大川に“あやかし舟”と呼ばれる嫌がらせをする舟が捕らえられ、きついお叱りを受けた…。「虫売りの男」六月の半ば過ぎに、新八郎は蟋蟀が数匹入った虫篭をもらった、蟋蟀は一匹一両もするという…。
目次■王子稲荷の女|寒紅梅|里神楽の殺人|柳と蛙|夕顔観音堂|あやかし舟|虫売りの男
装幀:熊谷博人
時代:寛政十一年~十二年
場所:王子、麻布本村町、三味線堀、飯塚村、大川、下谷車坂
(講談社・1,500円・98/10/12第1刷・249P)
購入日:98/10/17
読破日:98/11/03