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ころころろ

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ころころろ
ころころろ
(ころころろ)
畠中恵
(はたけなかめぐみ)
[ファンタジー]
★★★★

「しゃばけ」シリーズの第八弾、『ころころろ』は、一太郎が幼い日のエピソード「はじめての」から始まる。「なぜ?」と思いながら、読み進める。次の「ほねぬすびと」で、今の一太郎の話にもどる。しかし、ここで一太郎は目が見えなくなってしまう。

三話め「ころころろ」では、一太郎が無事でないと、江戸は安泰ではないとおもっているような兄やで手代の仁吉が河童を探す。「なぜ?」という疑問が再び頭をよぎる。四話め「けじあり」は、もう一人の兄や佐助が登場。なんと、おたきという女の小間物屋の主人に収まっている。「???」と盛大に疑問符が浮かぶ。

そして、最後に収録された「物語のつづき」へ。ここで、目の神様の生目神が登場することで、ようやく、「?」が消えてすっきりした。連作形式を取りながら、一見バラバラな話が実はつながっていたのだ。ひねりが利いた構成が面白い。

さて、構成の妙のほかにも、畠中さんの仕掛けがある。「はじめての」では、一太郎の初恋が描かれる。「ほねぬすびと」には、五徳猫という妖が登場する。七徳のうち、二つの徳をきれいさっぱり忘れた者だという。

「しゃばけ」ファンが楽しみなのは、鳴家のしぐさの可愛いさ。今巻でも、随所で楽しめる。白と黒の碁石を持って碁盤の上を動き回ったり、仁吉の袖に入って出かけて、若だんなとの連絡係を務めたり、「けじあり」では玉子焼きで殺されそうになったり。

「しゃばけ」シリーズ10周年ということで、巻末に、漫画家の萩尾望都さんと畠中さんとの対談が収録されていた。久々に萩尾さんの話が聞けて、少し得した気分。

主な登場人物
一太郎:廻船問屋兼薬種問屋長崎屋の跡取り、若だんな
藤兵衛:長崎屋の主人。一太郎の父
おくま:若だんなの乳母
佐助:長崎屋の手代で、実は犬神というという妖
仁吉:長崎屋の手代で、実は万物に精通する白沢妖
屏風のぞき:屏風の中で石畳紋の着物を着た付喪神
野寺坊:乞食坊主の妖
獺:美童の妖
五徳:五徳猫という妖
金次:貧乏神
日限の親分:馴染みの岡っ引き
栄吉:菓子屋三春屋の息子で、一太郎の友だち
源信:医者
お沙衣:十五の娘
おたつ:お沙衣の母で、仕立てで暮らしを立てている
古田昌玄:目医者
熊吉:簪職人
岩崎:久居藩士
小ざさ:切り下げた髪で振袖を着た人形の妖
寛朝:上野広徳寺の僧
秋英:寛朝の弟子
万太:付喪神や化け狐と話せる男の子
ろくろっ首:妖
骨傘:唐傘の付喪神
河童
悪鬼
おたき:小間物屋多喜屋の女主
源助:多喜屋の奉公人
生目神:目の神様

物語●
「はじめての」
十二歳のときの一太郎。手練の病持ちで、日ごと違った病に罹ることに慣れてはいるが、ずっと変わらず、長崎屋の離れの寝間で寝込んでいた。その一太郎のもとに、岡っ引きの日限の親分が、縄張りの長屋に母親と二人で住んでいるというお沙衣を連れてきた。「母親がの目の具合が悪くて、その目を治すのに、七つのお宝が必要なんです」と、お沙衣は思わぬことを言い出した…。

「ほねぬすびと」
ある朝、一太郎が目を覚ますと、あたり一面闇の中で目が見えなくなっていた。長崎屋は大事な大事な跡取り息子がの若だんなが目が急に見えなくなったことで大騒ぎに。そんな長崎屋の廻船問屋に久居藩の江戸上屋敷の藩士が贈答に使う藩名産の干物を江戸に運ぶ仕事を依頼する…。

「ころころろ」
仁吉は両国で河童を探しているときに、繁華な盛り場の隅の茶屋で、切り下げた禿のような髪をした娘小ざさに「おっかさんを見つけるのに力を貸してくれ」と頼みごとをされた…。

「けじあり」
小間物屋多喜屋を妻のおたきと二人で営んでいる佐助。帳場に入ると、“けじあり”という見慣れぬ紙が彼の前に現われた…。

「物語のつづき」
上野の広徳寺で、目の見えぬ若だんなは目の神である生目神と問答をすることに。神の問いに答えられれば失った目の光を取り戻すことができるという。「神とはいかなる者なのか」

目次■はじめての|ほねぬすびと|ころころろ|けじあり|物語のつづき|〈スペシャル対談〉萩尾望都×畠中恵

装画・挿画:柴田ゆう
デザイン:新潮社装幀室
時代:明示されず
場所:通町、南鍛冶町、両国、本所回向院、神田、上野広徳寺、ほか
(光文社・光文社時代小説文庫・550円・2011/12/01第1刷・2011/12/05第2刷・343P)
入手日:2011/12/18
読破日:2012/03/31

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