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暗殺春秋

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暗殺春秋
暗殺春秋
(あんさつしゅんじゅう)
半村良
(はんむらりょう)
[ピカレスク]
★★★☆☆

澤田ふじ子さんの「天路の枕」で、丹波篠山藩青山家が描かれたことが珍しいと思っていたら、この作品ではその青山家が重要な位置を占めている。当主は老中を務めた青山下野守忠裕(ただやす)の頃だ。青山家は、家康の頃(『影武者徳川家康』でも描かれている)と家光の頃、二代にわたって、徳川幕府の内部抗争に巻き込まれて手痛い目にあっている。そのため、幕政の中心にはなるべく深入りせず、温和で恨みを買うようなことをしないことを家訓にしていたらしい。そのため、小説に描かれることが少なかったようだ。東京・青山の名づけのもととなった青山家の故事にまつわる家宝も出てくる。

息子の意知が刺殺されてから失脚してしまったと思っていた田沼家が、当主が寛政の終わりから享和にかけての数年の間に五代続けて急死するという凶事に見舞われながら、玄蕃頭意正の代になって復権し、老中を務めるようになっていたのは意外だった。

この本、池波正太郎さんの「梅安」を彷彿させるところもあるが、それ以上に、物語のディテールに目が行くことが多い。柳生が出てきたり、祖先が家康に剣を教えた奥山流の当主が登場したり、といった具合に興味深い個所が多い。

物語●磯の香濃い深川の汐づけ長屋に、五年ぶりに研ぎ師の勝蔵が帰ってきた。勝蔵は、惚れた女に裏切られて、勤め先の刀拵師のもとから二十両の金を拝借して出奔していたのだった…。勝蔵は一流の刀研ぎ師であるとともに、町人ながら奥山流の剣の遣い手であった。幕府を裏で牛耳る影の大御所・一橋治済の陰謀と、それに立ち向かうグループの暗闘に、勝蔵はやがて暗殺者として巻き込まれることになる。

目次■第一話 帰って来た男/第二話 編笠孫右衛門/第三話 ふたり殺し/第四話 血まみれ寺/第五話 殺しのやまい/第六話 浪人宿/第七話 毒遣い一味/第八話 夜久の者/第九話 悪の種類/第十話 口封じ/第十一話

装画:羽山恵
装丁:坂田政則
時代:文化四年。
舞台:露月町、筋違御門前、本所番場町、神田富松町、下谷茅町二丁目。
(文藝春秋・1456円・96/12/10第1刷・291P)
購入日:98/1/4
読破日:98/2/8

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