螢丸伝奇
(ほたるまるでんき
えとう乱星
(えとうらんせい)
★★★★☆
♪えとうさんの処女長篇の待望の文庫化。百鬼丸さんの画は、ほんとうに伝奇小説によく合う。
以前、作者のえとうさんからメールをいただいたことがあるが、そのとき、『柳生武芸帳』に言及されていたことがあった。武芸帳自体は、未完ということもあり、ぼく自身はうまく消化できていなかったのだが、今回、えとうさんの本を読んだことにより、少しわかりかけた。この本は、五味康祐さんや隆慶一郎さんのファンの方にぜひ読んでほしい伝奇小説だ。
主人公の化龍は、沢庵和尚に育てられ、俊才として期待され明国に渡りながら、五年後に日本にもどってきたときには、呆けていた。ペルシャ猫のスジャータを連れ、墨染めの衣ながら、有髪のまま、首には水晶玉でできた二重の数珠をかけていた。この呆けるといった設定が、作者の「ほうけ奉行」にも通じるようで面白い。
物語●世の乱れを嘆き、阿蘇に眠る伝説の神刀“螢丸”を求めて旅立った沢庵和尚の弟子化龍(かりゅう)。だが、彼の思いとは裏腹に前途には血の匂いが…。柳生十兵衛が、宮本武蔵が、荒木又右衛門が剣戟の火花を散らす!
目次■螢丸由来/化龍出廬/八瀬無情/剣士往来/阿修羅山/幻塵螢丸/解説 宗肖之介