(うみのかいどう)
(どうもんふゆじ)
[経済]
★★★★
♪童門冬二さんというと、『小説上杉鷹山』の作者という印象が強い。感動的な人間ドラマに、経営者向けの処世訓を盛り込むという筆さばきが絶妙だった。
最近、江戸時代の海運について関心を持ちはじめたので、今回はその視点から読んだ。面白かった。とくに、幕末の激動期に先駆けて“海の街道”を歩んだ、領地に海のない小藩、越前大野藩(藩主・土井利忠)の軌跡は、新鮮だ。今の言葉で言えば、国際化の最先端をいくといったところか。
「からくり弁吉」こと、大野弁吉が主人公として登場する。作中でも、からくり人形がいくつか紹介されている。別の本で弁吉作のからくり人形を写真で見ると、本当に精巧でよくできている。木製のロボットのようだ。
坂本龍馬、勝海舟、川路聖謨、橋本左内、三岡八郎、岡田以蔵、千葉重太郎など、幕末の有名人も出るので、ファンの方はどうぞ。
銭屋五兵衛の登場する作品では、『抜け荷百万石』(南原幹雄著、新潮文庫)があった。他に『美男狩』には、銭屋五兵衛の孫娘が出ていた。
物語●「海に国境はない」という本多利明(当時の学者)の理念をもとに、鎖国の時代に積極的に北方交易を行う加賀の海商銭屋五兵衛。そしてその番頭の大野弁吉を中心に、鎖国から開国と、激動する時代を生きた海の男たちの話。
目次■(上巻)酒田港/ニシンの国/箱館/若い鯨たち/五兵衛の決断/弁吉と兵六/本当の北前交易/湖に死魚が浮いた/銭屋滅亡/追いつめられて/山の開国者たち/商会大野屋/日の丸とおもだかの旗/江戸へ|(下巻)勝麟太郎/攘夷論者の坂本龍馬/有道の国と無道の国/友愛の灯/対露交渉と対米交渉/海防掛大久保の悩み/市中の山居/弁吉に殺到する大名家/椿の海/“道”の実現/経世済民/大野丸/時代の嵐/あとがき/解説