魔風海峡 下 血戦!高麗七忍衆
(まふうかいきょう・じょう・しとう・さなだにんぽうだん/まふうかいきょう・げ・けっせん・こうらいしちにんしゅう)
(あらやまとおる)
[伝奇]
★★★★☆☆
♪『高麗秘帖』が圧倒的なスケールで面白かった、荒山さんの第2作品。秀吉の朝鮮出兵の陰で、日・朝両国命運を賭けたすさまじい暗闘を描く時代伝奇ロマン。朝鮮水軍の李舜臣も前作に引き続き登場する。
カバー帯に、「これだけ破天荒なストーリーをこれほどの熱気をもって書ける作家はいない」という、文芸評論家の縄田一男氏のコメントがある通りの作品。前作『高麗秘帖』に続く、秀吉の朝鮮出兵をテーマにした時代小説であるが、前作を上回るスケールとイマジネーションと筆力で書かれている。
著者自身が、韓国留学と朝鮮半島の歴史と文化を学んだ成果が十二分に発揮され、抜群に面白い。
時代小説ファンには、少し手垢がついた感がある、真田十勇士(この作品では、猿飛佐助、霧隠才蔵、百合鎌之助、根津甚八、筧十蔵、海野六郎、望月小六郎の七人が登場するが)と服部半蔵を引っ張り出しながらも、そこに高麗七忍衆(棺靼帝、蚩尤旗、沙梁部曇厳、伽耶夫人、紗羅骨笏覩、紫微宮卿、天暁一輝)という朝鮮方の忍びをぶつけることで、まったく新しい伝奇小説を作り上げている。真田忍軍vs.高麗七忍衆は、まさに山田風太郎さんの『甲賀忍法帖』を想起させる忍法合戦である。
また財宝をめぐる争いは、伝奇小説の定番であるが、この作品では、聖徳太子よりも前の時代の欽明帝の任那に遺した財宝というのがロマンにあふれていていい。
忍者たちがみな個性的でいい。とくに李氏朝鮮の王子・臨海君(イムヘグン)が高貴ながら凛とした好人物として描かれていて魅力的だ。映画化する場合はさしずめぺ・ヨンジュンさんあたりが敵役だろうか。時代小説も韓流が面白い?!
物語●慶長の朝鮮征伐は泥沼と化し、秀吉も死の床に伏していた。石田三成は、徳川家康を牽制するためにも、豊臣家の財政の立て直しを急務と考え、真田幸村に埋蔵金を探し出す密命を与えた。埋蔵金は、一千年前、欽明帝が朝鮮半島の任那日本府に遺した隠し財宝だった。秘命を帯びた幸村は、猿飛佐助ら真田忍軍とともに、釜山に渡る。一方、その動きを察知した家康は服部半蔵に追跡させた…。(上巻)
朝鮮半島で真田幸村主従を待ち受けていたのは、李氏朝鮮の王子・臨海君率いる高麗忍者の想像を絶する妖術戦だった。そして、高麗忍者七忍衆の一人、紫微宮卿(サミグンギョン)は、病床の秀吉を暗殺するために京にやってきた…。(下巻)
目次■序章/第一章 略奪禁書「任那本紀」の黄金/第二章 真田幸村抹殺指令/第三章 徳川忍軍登場/第四章 欽明党の遺産/第五章 残賊成敗ニツキ已ムヲ得ザルノ儀/第六章 服部半蔵、高麗へ/第七章 悲愁の朝鮮王子/第八章 殉愛の剣、独立の剣/第九章 新羅忍法「一塔随逐舟楫」(以上、上巻)第十章 秀吉暗殺計画/第十一章 襲い来る死者の群れ/第十二章 高句麗忍法「大武仏」/第十三章 海中陵「大王岩」を爆破せよ/第十四章 ドン・アゴスティーニュの要塞/第十五章 「弥勒岩」断崖上の決闘/第十六章 順天湾封鎖作戦/第十七章 最後の海戦、月下に死す/終章/参考・引用文献/解説 縄田一男(以上、下巻)