(りんうしゅくしゅく やみをきる)
(あらさきかずみ)
[剣豪]
おすすめ度:★★★★
♪今治藩を出奔した鷹森真九郎が、江戸の町を震撼させる謎の軍団“闇”と闘う、剣豪小説「闇を斬る」シリーズ第五弾。ストーリー展開の面白さと、チャンバラシーンの迫力、主人公の痛快な活躍ぶりで、今、もっとも新作が読みたいシリーズの一つである。
このシリーズの魅力の一つは、真九郎の見せるチャンバラシーン。毎巻、20人以上の刺客を倒していき、5巻めで既に100人斬りを果している。一冊の中で5、6回襲われるシーンがあり、それも平均4人の刺客と剣を交えている。最近読んだ剣豪小説の中では、群を抜いた数量である。
しかし、チャンバラシーンが多い割りに血なまぐささが薄く、主人公の真九郎に爽やかさを感じるのはなぜだろうか?
1.刺客を送る謎の軍団“闇”の悪行非道ぶりが際立っている
2.真九郎が愛妻の雪絵を護るためにやもえず剣を遣っている
3.真九郎は道場仲間や、町奉行所の役人の力を借りず、自分の宿命として刺客と対峙している
4.超人的な強さを見せるばかりでなく、敵の剣に傷ついたりすることもある
また、真九郎の前に出現する刺客には2つのタイプがある。
1.名前を名乗り、1対1の対決を望む
2.報奨金を目当てに、数人で真九郎を狙う
1のタイプは、止むに止まれぬ事由から刺客を引き受けてしまうが、真九郎にはちゃんとした剣の立合いを望む。結果、力や運に見放されて倒されるが、真九郎により懇ろに弔われる。2のタイプの刺客は、真九郎の外出先で待ち伏せして数人で襲う。刺客たちには名前すら与えられない。
名前が出てこない分、不気味さというか得体の知れない怖さが表れていて逆に立合いシーンの緊迫感が高まってくるように思われる。
次々に真九郎を襲う刺客たち、徐々に明らかになる“闇”の首領鬼心斎の素顔、シリーズのヤマ場はこれからか。
目次■第一章 今治と江戸/第二章 辻斬の謎/第三章 もつれた糸/第四章 非情/第五章 憂愁の雨