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一膳飯屋「夕月」 しだれ柳

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一膳飯屋「夕月」 しだれ柳

一膳飯屋「夕月」 しだれ柳

(いちぜんめしや ゆうづき しだれやなぎ)

荒崎一海

(あらさきかずみ)
[捕物]
★★★★

主人公の片桐晋悟は、御膳所御台所人の弟で、家を飛び出して山谷堀沿いで一膳飯屋(といっても食材を吟味し、手の込んだ料理を出す店である)を営んでいる。御膳所御台所人は、江戸城中奥で将軍の食事を調理する役目。俸禄は五十俵でお役金が十両付く。

また、晋悟は無海流の小太刀の名手でもある。無海流(むかいりゅう)は越前国大野生まれの僧・無一坊海円が流祖。

ということで、この時代小説では、主人公の作る料理と小太刀の秘技が堪能できる時代小説。最近、料理を題材に取り入れた時代小説が多く刊行されているが、この物語で登場する料理は江戸の頃に実際に供されたと思われる、手の込んだものばかりで、その調理の過程や出来上がりが眼に浮かぶようで、料理好きにはたまらないところ。

料理のシーンに感心しながら読んでいたら、巻末に参考文献の一覧が掲載されていた。江戸の食文化と料理に関して、幅広く押さえられているので、江戸の料理について調べる際に、このリストは役立ちそう。

肝心の物語のほうも、一話完結の連作形式の捕物帳タッチで、謎解きとチャンバラが楽しめる。また、元六千五百石の旗本で、今は隠居の竿望斎の存在が物語に奥行きを与えている。

主な登場人物
片桐晋悟:山谷堀の一膳飯屋“夕月”の主人
おちよ:晋悟の女房
おつる:晋悟の娘
新太郎:晋悟の息子
源助:おちよの父で、本郷菊坂町で縄暖簾をやっている
おみね:源助の女房
清吉:“夕月”の板前
次郎太:“夕月”の板前見習
おふさ:“夕月”の女中
おやえ:“夕月”の女中
おかね:晋悟の子供たちの世話をする住み込みの女中
片桐又十郎:晋悟の長兄で、御膳所御台所人
安次郎:晋悟の次兄
竿望斎:隠居した、六千五百石の旗本曾我伊賀守助猷
曾我主水助順:竿望斎の嫡男で、中奥小姓
原左内:竿望斎の用人
竹垣安之丞:元書院番士で小普請の旗本
惣八:船宿“平川”の主人
おなつ:惣八の娘
友吉:船宿“平川”の船頭
伝蔵:家主
宍戸兵太夫:南町奉行所臨時廻り同心
筧勇三郎:南町奉行所定町廻り同心
金蔵:花川戸町の御用聞き
丈助:船頭
茂造:伝通院前表町の御用聞き
辰吉:山之宿町の裏店に住む魚の担ぎ売り(棒手振)
おさき:八百屋の娘
佐吉:豆腐屋
村松:御小人目付
小藤:三味線と踊りの師匠
おはつ:小藤の娘
おふみ:おはつの妹
小万:山谷堀一の芸者
小春:山谷堀の芸者
藤兵衛:船宿“高砂”の主
おつた:“高砂”の女中頭
鼬の鉄五郎:やくざ者
徳次郎:日本橋住吉町の合羽装束問屋柏屋の倅
茂太郎:日本橋富沢町の古着屋相模屋の倅
七之助:宮芝居の役者
おしま:柏屋の内儀
巴屋忠右衛門:森田町の札差
忠兵衛:忠右衛門の父
安次郎:阿部川町の御用聞きで火盗改の配下
おはる:小春の育ての親
勘六:福井町の御用聞き
吉次郎:南本所元町の船宿“元川”の次男
秋山:作州津山藩士
安右衛門:芝湊町の船宿“千浜”の主
おりよ:安右衛門の娘
平五郎:田町の御用聞き
喜四郎:飯倉新町の荒物屋万屋の末っ子
勝太郎:万屋の長男
おきち:水茶屋で働いていた娘

物語●「無海流小太刀」片桐晋悟は、桟橋から岸に上がってきた竿望斎が三人の浪人に襲われているところに遭遇し、得意の小太刀で賊を撃退し竿望斎を助ける…。
「しだれ柳」山谷堀一の売れっ子芸者・小万に商家の若旦那から夫婦になってくれという身請け話があった…。
「秋陰」“夕月”で働く女中の母親が、何者かに殺されるという事件が起こり、晋悟が犯人探しに乗り出した…。
「残菊」竿望斎の別墅からの帰りに、晋悟は羽織袴に覆面姿の四人組に襲われる。同じ夜、晋悟は小万の妹分の芸者・小春に関して相談を受ける…。
「隅田川雪景」隅田川の山谷堀近くの中洲で、武家男女の死骸が見つかった。20日ほど前に同じ場所で、相対死(心中)らしい若い町人男女の死骸が見つかっている。南町同心の筧から、晋悟は死骸の検分を依頼されるが…。

目次■無海流小太刀/しだれ柳/秋陰/残菊/隅田川雪景/解説 縄田一男

カバーイラスト:浅野隆広
装幀:カバーデザイン:かとうみつひこ
解説:縄田一男
時代:文政八年(1825)晩春三月
場所:新鳥越橋、山川町、三囲稲荷横、富士浅間宮横、待乳山聖天宮、岩代町、難波町の河岸、山谷堀、浅草田町二丁目、竹屋の渡し、ほか
(徳間書店・徳間文庫・648円・2012/02/15第1刷・393P)
入手日:2012/02/05
読破日:2012/02/09

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