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観光都市 江戸の誕生

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観光都市 江戸の誕生観光都市 江戸の誕生
(かんこうとし・えどのたんじょう)
安藤優一郎
(あんどうゆういちろう)
[江戸学]
★★★★☆☆

最近、江戸切絵図など、江戸の町に関する興味が湧いてきた。そんな折に、この本の新刊広告を見て読みたくなり、入手。

約100万人の人口を抱え、参勤交代などで絶えず住人が入れ替わった江戸を、一大観光都市としてとらえ、その観光事情をあきらかにした江戸入門書。都市・江戸=観光地というとらえ方は、地方出身者から見た東京とイメージが重なり、スムーズに受け取れる。

著者は、将軍吉宗の観光振興策やその意図、観光の中心となった寺社の集客力などをわかりやすく解説してくれている。とくに寺社が頻繁に行った開帳のメカニズムが面白い。開帳とは、通常は秘仏として参拝を許可しない仏像を、当の寺社が一定期間のみ、公開して信者に結縁の機会を与える、現在でも広く行われている宗教的行事のこと。開帳には、その神仏を所持する寺社で行う居開帳と、地代を払って他の寺社の境内を借りて催す出開帳の二種類がある。ヒットすると、短期間に多額の臨時収入ができ、寺社にとって魅力的な行事だったらしい。

もう一つ興味深かったのは、成田山新勝寺の江戸出開帳戦略。元禄の頃までは一地方寺院に過ぎなかった成田山は、江戸時代に繰り返して実施された出開帳を通して、全国区の寺院となり、現在でも初詣でにぎわうトップブランドになっている。出開帳成功に向けての周到な準備や、メディアミックス戦略など、今のディズニーリゾートなどのテーマパーク運営に通じるところがある。今まで成田山新勝寺に行ったことがなかったので、ぜひ参詣してみたい。
読みどころ●従来、観光地としてイメージされることが少なかった江戸。参勤交代で江戸にやってきた勤番侍などの日記をもとにその観光の様子を紹介。八代将軍吉宗の観光振興とその裏の事情や、寺社のご開帳の集客力など、大江戸観光事情を明らかにする一冊。

目次■プロローグ|第一章 日記が語る遊山の楽しみ 1 憧れの江戸単身赴任(将軍の帰城に出くわす/今日は両国、明日は目黒/定番の赤穂浪士墓所/生まれて初めてのおいらん道中/舶来動物は大人気/梅若伝説・隅田川に触れる/高級料亭を満喫する/王子で異国人に出会う/寺巡りより味巡り) 2 江戸っ子も大忙し(隠居大名、悠々自適/町名主、年賀に江戸城へ/酒呑童子、天下祭に現れる)|第二章 よりどりみどりの八百八町 1 吉宗の観光振興(誇りの証「江戸名所図会」/都市化が求めた気晴らし/寛永寺から飛鳥山へ/隅田川堤から桜餅/桜と紅葉の品川御殿山/犬小屋が桃園に/秘められた意図/緑あふれる庭園都市/下町に広がる水の都/振袖火事と両国橋) 2 御利益より娯楽の神社仏閣(参詣客も増やしたい/門前は一等地/半径二キロの周遊観光/ガイドブックと専属案内人/参勤交代が生む潜在需要)|第三章 ご開帳の集客力 1 なぜ開帳が頻繁にあったのか(寺社の多角経営/出開帳四天王/神社のデパート浅草寺/何かと理由をつけて……) 2 秘仏の力と信心だけには頼れない(六〇日で一六〇〇万人/お金でランクが決まる開帳空間./アイドルお仙登場/関羽像で賽銭が倍に/隠居大名、見世物をはしご/ディズニーランドも真っ青) 3 差別化がカギを握る経済効果(半年分の賽銭が二ヶ月で/新旧商人対決は冥加金勝負/開帳大失敗で霊宝売却/不振続く江戸後期の開帳/客寄せは赤穂浪士の遺品/目立つ奉納物で宣伝目論む商人/薄れていく宗教性)|第四章 成田ブランドを確立した戦略 1 佐倉藩主・稲葉正通の政治的意図(鉄道敷設の起源/宿寺・深川永代寺の利点/江戸城に入った成田不動/領民対策と老中の立場) 2 知名度アップに貢献した市川團十郎(講中に支えられた不動信仰/開帳にあわせた舞台が大ヒット/街道も門前町も活性化) 3 群を抜くマーケティング戦略(開帳までの長い道のり/立て札で町中に告知/華麗な江戸入り道中でさらに宣伝/メディア・ミックス/総額二〇〇〇両の大事業/一五〇年間の努力でトップブランドに)|第五章 武士たちの新規参入 1 武家屋敷の神仏――非日常的空間の魅力(流行神、太郎稲荷/若殿平癒で参詣殺到/便乗商法でトラブル発生) 2 大名家の貴重な副収入(国元の神仏を江戸に勧請/過熱を懸念する幕府/バカにはできない賽銭額/インチキで客寄せする大名/お国自慢と実益と)|エピローグ/あとがき/参考文献/索引

デザイン:新潮社装幀室
場所:両国、目黒、泉岳寺、吉原、向島、王子、寛永寺、飛鳥山、隅田川堤、品川御殿山、中野桃園、両国橋、回向院、浅草、浅草寺、深川不動ほか
(新潮新書・680円・05/06/20第1刷・199P)
購入日:05/06/24
読破日:05/06/25

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