2022年にもっともおすすめの時代小説ベスト10(文庫)
残念ながら、『この時代小説がすごい!』の2023年版の刊行はありませんでした。誌面での発表に代わり、「時代小説SHOW」による、2022年文庫書き下ろし時代小説のベスト10をお届けします。
対象は、Amazonでの発売日もしくは奥付表記が2021年11月1日から2022年10月31日発行の時代小説作品(シリーズ)で、文庫書き下ろし(文庫オリジナル)作品になります。単行本の文庫化は対象外です。
今村翔吾(いまむらしょうご)
講談社・講談社文庫
対象期間中の作品は『イクサガミ 天』(2022年2月刊)の1作。
♪直木賞受賞後第1作は、明治十一年の東海道を舞台に、江戸の剣客である主人公の嵯峨愁二郎をはじめ命知らずの猛者たちが繰り広げるデスゲーム。読み始めたら止められないノンストップアクション活劇です。
井原忠政(いはらただまさ)
双葉社・双葉文庫
対象期間中の作品は『(8)小牧長久手仁義』(2022年2月刊)、『(9)上田合戦仁義』(2022年7月刊)の2作。
♪東三河の百姓出身の若者茂兵衛が家康の家臣の足軽となって、戦を通じて出世を重ねていく「三河雑兵心得」シリーズは、小牧長久手の戦いから第一次上田合戦へ。3年連続の1位ならずも、雑兵目線で描かれる戦国は断然の面白さがあります。
阿岐有任(あきありとう)
文芸社・文芸社文庫
対象期間中の作品は『隆家卿のさがな姫』(2022年8月刊)の1作。
♪刀伊の入寇の国難時に著しい武功をあげて京へ凱旋帰還した大宰権帥・藤原隆家。荒くれ者で「さがなもの」と仇名される隆家とその娘が、時の実力者藤原道長を相手に、后候補を目指す平安時代を舞台にした痛快物語。思わぬ掘り出し物です。
矢野隆(やのたかし)
集英社・集英社文庫
対象期間中の作品は『琉球建国記』(2022年4月刊)の1作。
♪阿麻和利と呼ばれる加那のもとで交易が盛んになり、繁栄をもたらされた勝連に、琉球王国統一を目指す尚泰久王の側近・金丸の魔の手が伸びます。創成期の琉球王国を舞台に繰り広げられる、熱い男たちのバトルに、魂が震える歴史エンタメです。
高田郁(たかだかおる)
角川春樹事務所・時代小説文庫
対象期間中の作品は『あきない世傳 金と銀(十二) 出帆篇』(2022年2月刊)、『あきない世傳 金と銀(十三) 大海篇』(2022年8月刊)の2作。
♪摂津国の寒村で生まれた幸は、大坂の呉服商「五鈴屋」に女衆として奉公し、商いに惹かれていき、やがては江戸で店を持つまでに。次々と苦難が店を遅いますが、幸は商いの知恵と人の輪で乗り越えていきます。感涙の細腕繁盛記は、第13巻で完結。
芝村凉也(しばむらりょうや)
双葉社・双葉文庫
対象期間中の作品は『【三】蟬時雨』(2021年12月刊)、『【四】狐祝言』(2022年4月刊)、『【五】-かどわかし』(2022年8月刊)の3作。
♪本書の主人公、裄沢広二郎は、道理に合わなければ上役にも臆せずに物申す、北町奉行所の用部屋手附同心です。周囲からは「やさぐれ」とも評されています。『【三】蟬時雨』では、親友の代わりに定町廻りを務めることとなり……。捕物劇を楽しむとともに、複雑な奉行所内の人間模様も興趣を深めていく奉行所小説です。読み味が良く、癖になる面白さがあります。
筑前助広(ちくぜんすけひろ)
アルファポリス・アルファポリス文庫
対象期間中の作品は『谷中の用心棒 萩尾大楽: 阿芙蓉抜け荷始末』(2022年2月刊)の1作。
♪江戸・谷中に剣術道場を構える萩尾大楽は、谷中界隈で閻羅遮と恐れられ、かつ町の平安を守る用心棒をつとめていました。家督を譲った弟が脱藩したことを知り、その裏の事情を探ると、御禁制品である阿芙蓉の密輸を巡り、江戸と九州につながりが見えてきました……。ネット小説出身の著者が切り拓いた、エンタメ時代小説。
坂井希久子(さかいきくこ)
文藝春秋・文春文庫
対象期間中の作品は『朱に交われば』(2022年5月刊)の1作。
♪『色にいでにけり』に続く、江戸のカラーコーディネーターが活躍する、連作形式のお仕事小説シリーズの第2弾。天性の色彩感覚を持つお彩は、ふと知り合った京男の右近に誘われるように、呉服の色見立てを始めて評判になります。『朱に交われば』では、流行りの色を作れという難題が与えられました。
宮本紀子(みやもとのりこ)
角川春樹事務所・時代小説文庫
対象期間中の作品は『ふたりの道 (五)』(2022年8月刊)の1作。
♪日本橋伊勢町にある小間物商の大店「丸藤」には、店に立つ姉の里久と伊勢町小町と呼ばれる美人の妹・桃の看板姉妹がいました。「小間もの丸藤看板姉妹シリーズは、若い二人が仕事に情熱を注ぎ、恋に胸を焦がしていく、胸キュンの大江戸ガールズ時代小説です。姉妹がそれぞれの道を歩むこととなった『ふたりの道 (五)』で、大団円となりました。
山本幸久(やまもとゆきひさ)
集英社・集英社文庫
対象期間中の作品は『大江戸あにまる』(2022年9月刊)の1作。
♪江戸留守居役の下で働く幸之進は、なぜか生き物の面倒をみる羽目に。駱駝に始まり、豆鹿、伽藍鳥、羊、狼、豚、山鮫、猩々など、江戸では珍しい生き物と人との交流を描く動物小説。最近のペットブームを背景に、2022年、犬や猫、小鳥など可愛い生き物が登場する動物時代小説が数多く刊行されました。