2020年時代小説ベスト10 文庫書き下ろし部門
「時代小説SHOW」による、2020年文庫書き下ろし時代小説のベスト10を発表します。
対象は、Amazonでの発売日もしくは奥付表記が2019年11月1日から2020年10月31日発行の時代小説作品(シリーズ)で、文庫書き下ろし作品になります。単行本の文庫化は対象外です。
井原忠政
双葉社・双葉文庫
♪ 対象期間中の作品は『(一)足軽仁義』(2020年2月刊)と『(二)旗指足軽仁義』(2020年4月刊)、『(三)足軽小頭仁義』(2020年6月刊)の3作。
三河一向一揆から、姉川の戦い、浜松城築城、三方ヶ原の合戦へ、家康のもとで、雑兵として活躍している茂兵衛を描く、痛快でホロっとする戦国足軽出世物語。
高田郁
角川春樹事務所・時代小説文庫・ハルキ文庫
♪ 対象期間中の作品は『(八) 瀑布篇』(2020年2月刊)と『(九) 淵泉篇』(2020年9月刊)の2作。
「禍福は糾える縄の如し」で、災厄や商売上の最大の危機が、五鈴屋江戸店を襲います。巻数が進むにつれて面白さがますます増してきて、2020年の11月時点ではこのシリーズを1位に推そうと考えていました。
今村翔吾
祥伝社・祥伝社文庫
♪ 対象期間中の作品は『黄金雛 羽州ぼろ鳶組 零』(2019年11月刊)と『襲大鳳(上) 羽州ぼろ鳶組』(2020年8月刊)、『襲大鳳(下) 羽州ぼろ鳶組』(2020年10月刊)の3作。
松永源吾らが駆け出し見習いで父親の火消たちが活躍した時代を描く「ぼろ鳶組」のエピソード1、『黄金雛』。その『黄金雛』を壮大なる伏線にして、『襲大鳳(上)(下)』につなぐ驚嘆の火消の物語に魅了されました。
佐々木功
角川春樹事務所・時代小説文庫・ハルキ文庫
♪ 対象期間中の作品は『家康の猛き者たち 三方ヶ原合戦録』(2020年4月刊)。
徳川家康の二人の武将、本多平八郎と二代服部半蔵正成が三方ヶ原合戦でいかに戦ったを描いています。虚実を織り交ぜた、家康の猛き者たちが躍動していく、血沸き肉躍る戦国時代小説です。
木村忠啓
祥伝社・祥伝社文庫
♪ 対象期間中の作品は『虹かかる』(2020年4月刊)。
天保の改革が行われていた頃、浪人飛田忠矢は人生をリセットすべく、常陸国・麻生を訪れます。かの地で知り合った六人の仲間と麻生藩の陣屋を守り、無頼の者や農民四百人と戦う痛快アクション時代小説。
上田秀人
小学館・小学館文庫
♪ 対象期間中の作品は『(一)召喚』(2020年2月刊)と『(二)始動』(2020年8月刊)。
大坂一の商人を目指す若者・一夜が剣術大名・柳生宗矩に仕え、得意の勘定を使って活躍していく痛快時代小説。次々とヤマ場があるストーリー展開、エンタメ度が高い、武と商の対決が見ものの上田ワールド全開です。
鷹井怜
KADOKAWA・角川文庫
♪ 対象期間中の作品は『お江戸やすらぎ飯』(2020年1月刊)と『お江戸やすらぎ飯 芍薬役者』(2020年8月刊)の2作品。
グルメ時代小説が人気の中で、2020年も、柴田よしきさんの『お勝手のあん』、出水千春さんの『吉原美味草紙』など、読んで美味しい作品が登場しました。「料理で人を救いたい」と薬膳料理に着目した本書を推します。
植松三十里
集英社・集英社文庫
♪ 対象期間中の作品は『レイモンさん 函館ソーセージマイスター』(2020年3月刊)。
日本に本物のソーセージとハム作りをもたらした、ソーセージマイスター、カール・W・レイモンの波瀾に満ちた半生を描いた人物伝。大正、昭和、平成を夫婦で幾多の苦難を乗り越えていく物語で、家族の愛と葛藤、心情が描かれています。
鷹山悠
ポプラ社・ポプラ文庫
♪ 対象期間中の作品は『隠れ町飛脚 三十日屋』(2020年10月刊)。
依頼人から託された、いわくつきの品と想いを届ける隠れ町飛脚が描く、連作形式の人情時代小説。心に傷を負い、人に話せない過去をもつお静が、裏長屋で始めた仕事を通して人々を触れ合い再生していきます。物語のやさしさが心に沁みます。
倉本由布
早川書房・ハヤカワ時代ミステリ文庫
♪ 対象期間中の作品は『寄り添い花火 薫と芽衣の事件帖』(2020年6月刊)。
札差の十五歳の娘、薫が岡っ引きをつとめ、北町奉行所の定町廻り同心見習いの妹・芽衣がその下っ引きとして事件を解決していく、娘二人の大江戸バディ捕物帖。衝突しながらも助け合っていく二人。過去の事件も明らかになり、胸がキュンキュンするミステリーです。