時代小説ベスト10 装画・装幀で選ぶ時代小説10
本を買うとき、何をポイントに買う? よくわからない作家の場合、装幀・装画で買うとうまくいくことがある。
ユーモア小説なら和田誠さん、ミステリー(冒険小説も可)なら辰巳四郎さん。この人たちが表紙カバーをつくっているならまず安心。
では、時代小説では…。
1位は、時代小説のカバー装画の第一人者で、「人いじめの装画家」、蓬田やすひろさんのカバー。
といっても、弟子をいじめたり。編集者をいじめたりしているわけではない。彼のつくるカバーでは、人物たちがいろいろな形で虐げられているので、勝手にそう呼ばせていただいている。
『秘太刀馬の骨』では、後ろ姿にされたり、振りかぶった腕に顔を隠されたりする。『霜の朝』では、首から上が画面から外れて描かれていない。『闇の梯子』窓の桟に、『夜消える』では、引き戸に顔の一部を隠されている。『三屋清左衛門残日録』では、米粒大に描かれてしまう。『拷問蔵 公事宿事件書留帳』では、本当に責め抜かれた男を描いている。タブーともいえそうな大胆な構図ばかりだ。
矛盾するようだが、新しい有望なイラストレーターや装幀家の登場を期待したい。
(注)初出のときのランクを変えていないが、2000年代後半からの時代小説の文庫書下ろしブームなどの影響もあり、新しいイラストレーター・画家たちが表紙装画を手がけている。深井国さん、安里英晴さん、宇野信哉さん、卯月みゆきさん、村田涼平さんら個性的なタッチで活躍している。
十年以上たった今でも、蓬田やすひろさんが表紙を担当された時代小説は、ジャケ買いしてしまう。(ということもあり、「時代小説SHOW」のブックガイドでは装画・装幀者の情報も入れるようにしている)
(初出1996/12/18、加筆修正2011/11/25)