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装画・装幀で選ぶ時代小説10

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時代小説ベスト10 装画・装幀で選ぶ時代小説10 時代小説ベスト10

本を買うとき、何をポイントに買う? よくわからない作家の場合、装幀・装画で買うとうまくいくことがある。
ユーモア小説なら和田誠さん、ミステリー(冒険小説も可)なら辰巳四郎さん。この人たちが表紙カバーをつくっているならまず安心。
では、時代小説では…。

順位 装幀・画家名 相性のいい作家 作品名
1位
蝉しぐれ
蓬田やすひろさん 藤沢周平さん、北原亞以子さん 蝉しぐれ、深川澪通り木戸番小屋
今、時代小説といったらこの人。絵の特徴は人物が小さく、直線が多い
2位
はやぶさ新八御用帳 大奥の恋人
佐多芳郎さん 平岩弓枝さん、吉川英治さん はやぶさ新八御用帳、風の砦
大御所。日本画のタッチを生かし、面長の顔、切れ長の目、細いまげが格調高い
3位
剣客商売
中一弥さん 池波正太郎さん 剣客商売、手跡指南神山慎吾
闊達な画が池波作品の「剣客商売」にぴたりマッチ
4位
海狼伝
西のぼるさん 白石一郎さん、隆慶一郎さん 海狼伝、吉原御免状
渋さや地味な方向にいきがちな画が多い中で、明るさが目立つ
5位
仕掛人・藤枝梅安
辰巳四郎さん 池波正太郎さん、山本周五郎さん 仕掛人・藤枝梅安、さぶ
画像処理が素晴らしく、装幀を見ただけで嬉しくなる
6位
用心棒日月抄
村上豊さん 藤沢周平さん、宮部みゆきさん 用心棒日月抄、ぼんくら
墨痕がユーモアな雰囲気を醸し出している
7位
喜多川歌麿女絵草紙
宮田雅之さん 藤沢周平さん 喜多川歌麿女絵草紙
NHKの「天晴れ夜十郎」(原作は半村良さんの『碑夜十郎』)のタイトルバックがよかった
8位
手習い重兵衛 闇討ち斬
百鬼丸さん 鈴木英治さん、宇江佐真理さん 手習い重兵衛、泣きの銀次
黒と白のコントラストを生かした人物像に淡いバックが特徴
9位
花と火の帝
菊地信義さん 羽太雄平さん、隆慶一郎さん 本多の狐、花と火の帝
エディトリアルデザイナー界の大御所。タイトル文字のデザイン処理の完成度が高い
10位
真田太平記
池波正太郎さん 池波正太郎さん 真田太平記
個性が絵に出ていて、プロにはない素人らしい味がある

1位は、時代小説のカバー装画の第一人者で、「人いじめの装画家」、蓬田やすひろさんのカバー。
といっても、弟子をいじめたり。編集者をいじめたりしているわけではない。彼のつくるカバーでは、人物たちがいろいろな形で虐げられているので、勝手にそう呼ばせていただいている。

『秘太刀馬の骨』では、後ろ姿にされたり、振りかぶった腕に顔を隠されたりする。『霜の朝』では、首から上が画面から外れて描かれていない。『闇の梯子』窓の桟に、『夜消える』では、引き戸に顔の一部を隠されている。『三屋清左衛門残日録』では、米粒大に描かれてしまう。『拷問蔵 公事宿事件書留帳』では、本当に責め抜かれた男を描いている。タブーともいえそうな大胆な構図ばかりだ。

玄鳥 秘太刀馬の骨 霜の朝 闇の梯子 夜消える 三屋清左衛門残日録 拷問蔵 公事宿事件書留帳

矛盾するようだが、新しい有望なイラストレーターや装幀家の登場を期待したい。

(注)初出のときのランクを変えていないが、2000年代後半からの時代小説の文庫書下ろしブームなどの影響もあり、新しいイラストレーター・画家たちが表紙装画を手がけている。深井国さん、安里英晴さん、宇野信哉さん、卯月みゆきさん、村田涼平さんら個性的なタッチで活躍している。

十年以上たった今でも、蓬田やすひろさんが表紙を担当された時代小説は、ジャケ買いしてしまう。(ということもあり、「時代小説SHOW」のブックガイドでは装画・装幀者の情報も入れるようにしている)

(初出1996/12/18、加筆修正2011/11/25)