2022年にもっともおすすめの時代小説ベスト10(単行本)
「時代小説SHOW」による、2022年単行本時代小説のベスト10をお届けします。
対象は、Amazonでの発売日もしくは奥付表記が2021年11月1日から2022年10月31日発行の時代小説作品で、単行本で刊行された作品になります。
【文庫書き下ろし部門】に続き、【単行本部門】も、今村翔吾さんの作品を1位に選びました。昨年1年間の仕事ぶりに刮目していました。
ベスト10では、時代小説の未来をという観点も加味して、活躍著しい気鋭の作家やWeb出身の作家に注目しました。
今村翔吾(いまむらしょうご)
中央公論新社
2022年3月刊
♪豊臣家を滅ぼして江戸幕府を二百余年の安定の礎を作った徳川家康。その偉業に小さな魚の骨のように突き刺さったのは、大坂の陣での真田幸村でした。だれもが知っている歴史を扱いながら、武将たちを攪乱し乱世を駆け抜けた真田家の痛快な生き様が存分に描かれ、心地よい感動と満足感が得られました。
千葉ともこ(ちばともこ)
文藝春秋
2022年5月刊
♪楊貴妃に玄宗皇帝、安禄山……、日本人にも馴染みのある中国唐代を舞台にし、虚構の人物の活躍と史実がシンクロしてゆき、中国歴史のダイナミズムに胸が熱くなる、エンターテインメント小説。戦闘場面の臨場感、友情と裏切りの連続で、巧みに構成された物語世界に引き込まれます。
砂原浩太朗(すなはらこうたろう)
講談社
2022年1月刊
♪家老を務める黛家の三兄弟に降りかかった大きな事件を通じて、兄弟の誇りを守るために戦った末弟新三郎は自身の未熟さを知るとともに、これを機に大人の世界へと踏み出していきます。本書の魅力は、新三郎の成長の物語とともに、十三年の歳月を経てなお、藩内の政争に翻弄される黛家の兄弟たちの姿が活写されています。
天津佳之(あまつよしゆき)
PHP研究所
2022年6月刊
♪学問の神様として知られる、平安時代屈指の文人政治家・菅原道真の生涯を描いた長編。ときには漢詩を織り交ぜて道真の心情を格調高く描出し、また血の通った人間のドラマとして描き、読者を平安時代に誘ってくれます。当代一の学者としての面ばかりでなく、この国を本気で救おうと奮闘した秀でた政治家の面に胸を打たれました。
永井紗耶子(ながいさやこ)
中央公論新社
2022年4月刊
♪2022年は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、かつてないほど鎌倉時代が注目を集めました。源頼朝と北条政子の長女・大姫の入内をめぐる、京と鎌倉の駆け引き、母政子と娘大姫の愛憎の相克を描いた長編。大姫の薄幸な生涯に光を当てながらも、物語性豊かに女たちの鎌倉を描き切っています。
赤神諒(あかがみりょう)
集英社
2022年7月刊
♪竹田藩で一族郎党二十四人が斬殺されるという凄惨な事件が起きました。ただ一人逃げのびた次郎丸は、惨殺の下手人への復讐を誓い江戸で剣を磨き、十四年後にぶりに藩の剣術指南役として故郷に帰ってきました。スリリングな場面の連続、スピード感あふれる展開で、読みだしたら止められない時代ミステリーです。大量惨殺の謎が解き明かされると、著者の仕掛けた壮大な仕掛けの見事さに驚嘆しました。
吉川永青(よしかわながはる)
中央公論新社
2022年5月刊
♪著者が得意とする武将たちをヒーローにした戦国時代小説のように、史実や伝説を巧みに織り込みながら、天才商人紀伊國屋文左衛門の知られざる生涯を描いた痛快な一代記となっています。そう、紀文って、やっぱり粋でカッコいい漢(おとこ)だったんだなあと、読後に快い余韻に浸れる一冊です。
蝉谷めぐ実(せみたにめぐみ)
KADOKAWA
2022年1月刊
♪森田座の若手売り出し中の女形喜多村燕弥は、舞台を降りても振袖を着て、化粧をし、髪を結い上げ、女子の言葉を舌に乗せ、尋常を女子として過ごしています。下級藩士の娘志乃は、幼い頃から武士の作法を叩き込まれていましたが、歌舞伎のことを何一つ知らずに、父の命じるままに燕弥のに嫁ぎました。文政の江戸を舞台に繰り広げられる、おかしな夫婦の暮らしぶりとその中で次第に惹かれていく二人の恋物語が描かれ、ラストでは感情を大きく揺すぶられました。
鳴海風(なるみふう)
早川書房
2022年9月刊
♪武家の母として悩みながらも、会津藩の女たちとなぎなたの稽古に励み、我が子を戦場へと送り出す母。好きな数学や天文を封印して、その母の期待に応えるべく学問や槍術に励む息子。幕末の会津を舞台にしながらも悲劇性を乗り越えた、母と子の強いきずなが描かれ、再起と救いに満ちた清涼感のある物語になっています。
早川隆(はやかわたかし)
アルファポリス
2022年2月刊
♪礫投げが得意な若者・弥七は、陰と呼ばれる貧しい集落で、地を這うように生きてきました。はずみで自分の礫で人を殺してしまい、陰から外の世界へ飛び出します。桶狭間の戦いへと至る人間ドラマが、雑兵とさえ呼べぬ、城や砦の作事を担う黒鍬衆の若者目線で描かれています。ロマンあふれる物語性豊かな展開と、ド迫力の戦闘シーンの臨場感に圧倒されました。